第3話「愛されない子」

 月だけが、我々を暖かく見守り、光を与えてくれる。


 父は、我々をみ嫌っているのか?


 何故、暗い闇の中へ閉じ込めた?


 陽の光を浴びることも許されず。


 子として、愛された記憶もない。


 ならば何故、我々を産んだ?


 同じ子である人間には、与え続けているというのに――。


 それとも、そもそも、父なんて居ないのか?


「キリストの呪縛じゅばくは解けた! 最早、恐れる者は、何処にも居ない! 我々こそが、霊長れいちょうと呼ばれるに相応ふさわしい存在であることを人間どもに教えてやろうではないか!」


 人の世に現れた神の実子キリストは、滅しても『その力』が消えることはなく、二千年もの間、ヴァンパイアを封じ込めていた。

 しかし、その力も、人の愚かなる行為まで止めることは出来なかった。

 人は、己を過信し、まるで自分に正義があるかのように、争いや略奪を繰り返した。

 そして、人はいつの間にか、父がそれを見ていると、考えなくなるようになってしまった。


 嫉妬しっとは、憎悪ぞうおへと変貌へんぼうし、

 そして、憎悪の裏側には……愛されたいと言う気持ちがあったのだろうか?


 愛されない子は、愛される子の血を吸うことで、愛される喜びを感じたかったのかも知れない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る