ハル。

水田真理

ハル。

はる、春、HAL、ハル。






日本の四季の中で春は1番美しいと思う。一瞬の儚さがあるからだ。


だが、春は残酷だ。



春は最高にバッドエンドが似合う季節だと思う。桜は他人行儀に美しく咲き、風になびかれ散る様子は白々しい。僕は裏切られ、傷つけられ、泣いているのに、君はそういう目をしていて立ち去る。笑われて記憶から消される。被害妄想が強いな、僕は。



だから、嫌いだ。好意的に接しているけど好きになってはくれない。気持ちの一方通行みたいな。おはようっと言って、無視されている感覚。



僕は春に負った傷を舐める。春が終わったそのあとも。ずっと。ずっと。赤くて独特な味がして生温い。



僕は嫌いなものを"嫌い"って言える。

去年よりほんの少しだけ背が伸びた。

今年もまだ生きてる。

そうやって舐める。舐めても治らない傷を。



それでも、それでも僕はいつか見返してやるよ。僕の傷を一緒に痛かったねと言って、バカだねって笑えるあなたを見つけるのだ。そして君の季節に幸せな僕を見せつけてやる。





"残酷"な君を"尊い"君に変えてみせるよ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハル。 水田真理 @mizutamari_tukitomo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ