第9話:「アカネ」求婚される

謁見の間

周りの目が痛いなぁと思いながら、一帯に警戒をしているアカネ

(城下に怪しいのいるけど、城内までは影響無いかな? )


「護衛の方も舞踏会にいらして、踊ってくださいな」


(ん?何のこと?)


警戒の方に意識を向けていたため話を聞いて居なかった


「アメリア皇国のロベール第2王子も要らしているのですから是非に、ねぇ王子様、うふっ」

(きもっ改めて聞くと、あの猫撫で声可愛くないよね、何故あれで騙されるんだよ!)

ロベール第2王子を見ると困った顔をしている

(どうも護衛は誰か聞かれて、第2王子だって言ったら何故か私にもとばっちりがきたみたい)


「いや、単なる護衛なんでえん・「いらしてね」・りょします」

(かぶせてきた・・・・はぁ・・・)

「ドレスは王宮にあるもの好きなのお選びになって・・・うふっ」

(きもい・・・何をたくらんで居るんだ?)

「山奥出身なんですってね、王宮の舞踏会是非堪能してらして」にこっ


(ああぁ、そう言えばそんな設定にしてたなぁ・・・

山奥の田舎者に恥かかせたいと言うわけか・・・むかつく!やってやろうじゃないの)

「わかったよ、参加すればいいんだろ・・・」

殺気は出さずに睨みつけて、ぶっきらぼうに言った

「まぁ言葉使いで出自(しゅつじ)が分りますわね・・・・」

いやそうな顔を向けて扇で口を隠すミッシェル・ブラウニ男爵令嬢

ロベール第2王子が言った

「申し訳ないあなたの事聞かれたので、前にギンガットに聞いてた内容を言ってしまった」

「大丈夫ですよ」




王城内に用意された、エリザベート皇女の部屋の隣にある女中部屋に、20着程のドレスが届いた

「いやみよねどう見ても・・・」

「短いですね、背の低い方用ですね」

なぜか楽しそうなルナ、170近く身長が伸びたアカネがきると丈がどう見ても30センチは短い

「好きにいじっても良いって言ってたよね」

「前に絹の生地手に入れられたのを使われるのですね」


不思議なことに絹が出回っていなかったのだ、

綿、麻、毛糸(ウール)、生地にはそれしか使われない

光沢がある生地があまり無いのである


「手持ちの生地と幾つかのドレス解体してアレンジしてみますか!」

「お手伝いします、時間は」

「たっぷりあるし・・・・<時間停止>」

時を止めてゆっくりとドレスを作った



舞踏会には各国要人とその夫人や高級貴族が犇(ひし)めいている

エリザベート第一王女夫妻の後ろからロベール第2王子とアカネが会場に入って来た

一気に注目をあびる

美形長身のロベール第2王子の隣に長身の優美な女性

Aラインのドレスは他の者達と一線(いっせん)を画(かく)す

ミッシェル・ブラウニ男爵令嬢が目線の片隅に見えた、目を見開いて驚いている


踊りが始まった、王太子がミッシェル・ブラウニ男爵令嬢と踊り始めたのを皮切りに一斉に踊りだす

「アカネ様」

ロベール第2王子に促されアカネもフロアに踊り出る

「ドレス素敵です、変わったデザインですし、この国の衣装とも思えませんが」

「準備してもらったドレスが小さくて、自分でアレンジしたのよ、結構楽しかった」

「凄いですね、短時間でお見事です!」

トータル時間は1週間ほどかけている、実際は3時間しか経っていない


周りの様子が可笑しい

「背中の傷のなんて無残な」

「でも花のようにも見えません?」

「隠すこともしないなんて女性としてどうかと思うぞ」

背中の大きく開いたドレスからは背中に斜めに切られた傷跡が見える

淡く見える傷は大きく花開くような跡を見せている


「顔の傷はメイクで隠したけど背中は、ま、いっか・・・と思ったのだけどまずかった?」

ロベール第2王子に聞いた

「背中の傷跡も美しい、それも貴女の個性です、好きですよ」

天使の微笑みをアカネに向けるロベール第2王子

(うっ!その顔で言うな~こいつに聞いたのが間違いだった・・・)


曲が終わりパートナーチェンジが始まった

アカネの元に意外な人物が来た

王太子がアカネにダンスを申し込む

「いいの?恋人をほっといて、嫉妬深そうな令嬢じゃない?」

「一応断りはして来た、問題ない」

「なんか、目付けられた気がするので、断りたいけどそういう訳に行かなよなぁ・・・」

それを見ていたロベール第2王子が後ろから王太子に威嚇しそうになるのを

間(あいだ)に割り込むようにして防いで、しょうがないので王太子の手を取る


曲が始まった、が

踊ろうとしていた人たちがフロアから消えていく

「また、難しい曲流すよね~誰の差し金やら・・・」

「えっと、護衛の・・・」

「冒険者のアカネですよ、殿下、アメリア皇国では高位ランクの冒険者やってます」

「アカネ殿、この曲踊れそうか?」

「多分大丈夫」

そうして複雑なステップを踏みながら二人はフロアを一杯に使って踊りだした

(魅了の魔法かな?大分効果が薄れてるみたいね、かけ続けると魔法も耐性がついて来るからなぁ)

「考え事しながらこの曲が踊れるなんてすごいな」

「体動かすの好きなので、ダンスも体術の訓練も変わらないくらいやってる」

(さてこれ以上魅了魔法かけられないように耐性を強化しておくか・・・

王太子ってこんな顔だったっけ?美形と言ったら美形の部類なのだが、最近綺麗な王族の顔ばかり見てるから感覚可笑しくなったかも・・・)


曲が終わり王太子に誘われてバルコニーに来ている

王太子はいきなり

「私の側室にならないか?」

「お断りします!」

思わず即答した

(こいつこんなにバカだったっけ?あぁ馬鹿だから魅了にさっさと引っかかるのか・・・)

「何故?不自由なく暮らせるし、綺麗なドレスも着れる」

「滅びる国に何の魅力があるの?馬鹿じゃない?それに私金持ちだし、綺麗なドレスいつも着たいと思わないし、冒険者が楽しくて幸せだし、意味わからないわ私に求婚するアンタが!」

「なっ・・・」

「滅びるよこの国は・・・国民が皆いなくなって、そのうち此処に来ている国の連中の誰かが攻めてくるだろうね~

フロアで踊る他国の要人を遠目で見る

いい具合に偵察がてらお呼ばれ出来てみんな喜んでるんじゃない?

何故税率を上げる?国の支出を見直さない?単純な計算できる人間なら誰でもできる計算だよ!収入と支出のバランス・・・ま、私には関係ないけどね」

アカネは知っていた散財しているのがミッシェル・ブラウニ男爵令嬢のせいだと言うことを

別荘を作らせたり、ドレスを数十着も作らせたり、宝石を買わせたり、自分の店を持ちたいと流行らない店を幾つも作ったり、専用の騎士団を作らせたり、人件費だけでも馬鹿にならないものだった

婚約者でもないのにである・・・


カランと髪飾りが落ちた

黙っていた王太子がそれを拾ってアカネに渡す

髪に指し直すのに手袋が邪魔だったので、はしたないのだが手袋を取って素手で頭に指し直した

「その左手首・・・」

「ああ、盗賊に手首を切り落とされましてね、自分で欠損部再生の魔法をかけて再生したんだけど、いくら日に照らしても日焼けしないのよね」


髪同様ツートンの手と手首・・・


「けっ欠損部再生!?それは大司教が80年かけてやっと習得した魔法をそなたか?」

「え?そうなの?そんなことないと思うよ他にも居たもの出来る人、この国に」

「本当か?教会に入るべきだ」

「こそこそ隠れてやってたなぁ・・・内緒にって言われた・・・教会に行きたくないから」

「なぜ?」

「金とるんでしょう?法外な」

「それは貴重な力だから」

「彼は無償でやってたよ、他の回復も無償で、あれこそ聖者じゃないかなぁ・・・」

「・・・・・」

「私、教会には登録してるよアメリア皇国のだけれど、たまに教会で無償で回復してる、アメリア皇国って本当に女神に愛されてるなぁって思うわ~国政が、国民も貴族も大事にする姿勢好きだわ!女性を下に見ないってところもね、女は男に従うもの・・なんて思っている時代遅れの国の男なんて願い下げだわ」

アカネは王太子に好き放題に言い放つ

(不敬罪?気にしないわ、なんなら私が引導を渡してやろうかしら滅びの・・・おっと世界征服はしないよ、しないって)


給仕の手伝いをいているルナがこちらを見ている


「王太子、護衛にもどらさせてもらうから、じゃね」

「フィオナではないのか?」

ぴたっと歩みを止めて向き直りもせずアカネは答えた

「あぁ~誰かに前にも聞かれたな、違うよ私は冒険者のアカネ、あんた達が貶めた令嬢じゃないよ」

「貶めた?あれは彼女が」

「ま、私には関係ないね、(もう)この国の人間じゃ無いし」

「あっ」


何かまだ言いたいようだったがアカネはその場を離れ

ロベール第2王子の方に戻った、

ちょうどミッシェル・ブラウニ男爵令嬢と踊り終わった様だ


「ふぅ~あれ何なんだろうね~」

「どうしたの?」

「魅了魔法はわが国では重犯罪だよ、私にもかけてくるなんて」

「高レベルのロベール王子には効かないでしょうね、彼女のレベルじゃあそのうちほかの人にも効かなくなるね、鍛錬して皆強くなっていくから」

「貴方のことを、根掘り葉掘り効かれたましたよ、高レベル冒険者で現在私から求愛中とだけ言っておきました、あなたの美しさや心の綺麗なところ、とても強いところが好きだと言ったんです」


あいかわらずなロベール第2王子だった、苦笑いのアカネ


「体を擦り付けて上目使いに見つめる目が、気持ち悪くて鳥肌ものです、あの女性が本当に王太子の恋人ですかねぇ、なかなか婚約の承認もらえないの分かる気がします」

(高レベルのロベール王子だから嫌悪を覚えるのだろうけど、王太子のレベルも前より10レベルは上がってる、魔物が大量に発生したって聞いたからその時に上がったんだろう、家臣の手柄でも一緒にパーティ組めば経験値か入るから、ま、今のレベルなら王都近辺の魔物なら余裕かな?

しかし、なんで側室なんて言い出したんだろう?)


王太子が正式に側室の申し込みをしようとしてたのを、少し元気になった王に止められ断念していたのをアカネは知らない、フィオナはもう居ない、フィオナになぜか未練が出て来た若き王はそっくりなアカネに興味津々であった


戴冠式が終わり、アメリア皇国への帰路

「暗殺者が数人逃亡したそうです」

「え?うそ!無力化の魔法具があるのに?」

ロベールが言った

「魔法具は取れて牢に転がっていたそうですよ」

「改心しなければ取れないのに・・・」

「改心したのでは?」

そういうのはエリザベート皇女

「まさか、どろどろな連中でしたよ」

「発言よろしいでしょうか?」

ルナが紅茶をテーブルに置きながら言った

「アカネ様がエネルギーを開放されて居る時、それを見ていた数人の暗殺者の心が変わった気配がしました。教会で祈りを真剣に奉げる信者のような雰囲気でしたよ、{改心}有りえると思います、アカネ様の信者として」

「げっ・・・信者って・・・神様じゃないってっえの!なんか、いやな予感が」

そっとロベールを見た

(こんなのが増えるのも困る)


【ルナ】:騎士団の詰所に大大的な魔法陣あれは呪詛返しですね

(もういっかな?復讐してもって思って、だって多分呪詛の連中のせいでしょう捏造が本当になったのって、普通調べれば捏造って分かるよ、呪詛返しで当人は死ぬだろうね、他国の関わりない連中がどうなろうが関係ないわ、弟や父にもやらかしてくれてるし、そして後ろ盾が無くなったらら、彼女なんか小物だもんね!」

【ルナ】:弟さん感謝してましたね

(ちょっとあの目は姉を見る目じゃ無かった気がっするのは気のせい?神を拝むような・・・・)

【ルナ】:アカネ様は女神ですよ信仰対象としては当然です、弟さんも信者・・・


(えーやだよ!神なんて~まったりライフ~)







=========


戴冠式、数日後


「王太子様~いえ、もう王様ですわね・・うふっ」

王家のサロンにミッシェル・ブラウニ男爵令嬢と若き王がくつろいでいる

「婚約発表は何時にします?ドレスも新調しなくてはいけませんから」

上の空の若き王、それに気が付かないミッシェル・ブラウニ男爵令嬢

「王になられのでもう誰の反対も無く婚約できますわね・・・うふふっ」


「アカネ・・・」

「何かおっしゃいました?」

「アカネ・・護衛の冒険者の、美しい人フィオナに似た」


ぴきっと眉間に血管が浮き出るミッシェル・ブラウニ男爵令嬢


「何なんですの?!アカネってフィオナ様に似ているって言っても、髪も目の色も身長も違うしそれにあの腕、男の方のような筋肉、どこがよろしいの?」

「体もバキバキに筋肉だったよ・・・しかし、美しい、ツートンの髪、腕までツートンなのは驚いた」

「腕がツートン?」

「左の手首、暴漢に切断されたそうだ」

「!う、腕ありましたよね?」

「凄いよあの若さで、<欠損部再生>の魔法で再生したそうだよ、魔法も凄いんだ、

再生したところが日焼けしないって困ってた、

アドバイスには耳が痛かったよ・・・

王としてしっかりとしないとな。

まずは財政、立て直すには質素倹約を勧める、婚約式は今まで作ったドレスを使う事、殆ど着てないのがあるだろう?

騎士団は解散、護衛は王宮に住めば近衛兵がいるので問題ないし、アクセサリーは王宮の宝物庫のを使って新調はしないこと、お茶会や舞踏会も頻繁に開かないこと、それと悪いがミッシェル・ブラウニ男爵令嬢、君は正妃には出来ない」

アカネを思い浮かべて優しい顔になる若き王、そして意を決したような精悍な顔つきに変わる


途中から話を聞いてなかったミッシェル・ブラウニ男爵令嬢


(左手?家にあるフィオナの左手・・・<欠損部再生>?どういうこと?え?何?そっくりサンじゃなく、本人?え?死んだはずじゃぁ)


ミッシェル・ブラウニ男爵令嬢は混乱していた


「ん?なんと言われました?正妃ではない?」

「身分的に無理なんだ、何処の公爵、伯爵も君を養子には出来ないと断られてね、側室は身分は関係ないからね、一緒に居られるだけで嬉しいと言ってくれていただろう?」

「公爵様が断ってきた?」

「令息がお願いしてくれたらしいが、公爵は頑として受け入れられないと断ってきた、娘が居るのに何故男爵令嬢を養子にせねばならないのかと、言われてね、

逆に男爵令嬢に肩入ればかりするのなら後継者候補から外すと言われたららしいよ、他の者のそうだ、私もたしかにそう思うよ、君を絶対正妃にって思ってたのが不思議だ、側室でも一緒にいられるじゃあないか」


(どういうこと?え?国一番の女性になれないってこと?)


「側室だから大々的な婚約式はしない、お披露目は内々にするので、それまで王宮に居るといいよ、妃教育の手配もしておくし、厳しい人みたいだけど、私の為に頑張ってほしい」

「お、おきさき教育?」

「側室でも王妃だからね、必要な知識とマナーは普通の貴族と違ってくるから、正妃じゃなくても国を支える国母になるんだ、歴史政治も必要だ、フィオナはもともとそういう教育を小さい時から受けていたから特に教育係は必要なかったが、下級貴族の君には必要だろう?」


勉強が大嫌いなミッシェル・ブラウニ男爵令嬢

蝶よ花よとおだてられながら好き放題出来ると勘違いしていた


「正妃は隣国の第3皇女の話がある、戦争を避けるために政略結婚は避けられない、後側室に3名ほど候補が上がっている、それも政略結婚だが、貴族の反乱を抑えるためには必要なんだ、君は側室は何人居ても良いと言ってくれた、愛するのは君だけだよ」


「それは正妃になれると思っていたから・・・どうか正妃にしてくだささいませ」

うるうると上目使いに見てくるミッシェル・ブラウニ男爵令嬢

魅了の魔法を放つ・・・が若き王に反応は無い

「ミッシェル・ブラウニ男爵令嬢、すまないでも愛するのは君だけだよ(たぶん)」



たぶん・・・がついた

魅了魔法が切れかかっている、耐性が強化されているため再度かけ直すのは不可能になっていた


(最近あの男が現れない・・・何をしているの?ライバルを始末して欲しいのに・・・

側室なんてどうして?今まで上手く行ってたのに、最近思うようにならなくなってきたどうして?)





ブラウニ男爵家の屋敷の手のオブジェが淡く光っている


そして、それまでミッシェル・ブラウニ男爵令嬢の周りに居た

怪しい連中が消えたことに彼女は気が付いていなかった、

そしてそれを使っていた黒幕達も使っていた黒の組織の手練れたちがことごとく消えたことに焦っていた

呪詛を施していた連中が呪詛返しに合い、死んだのもあせる原因だった


居なくなったのは怪しい連中だけではなかった、取り巻きだった令息たちも離れて行った、家の事情もあるが、皆大人になっている、自分の感情だけで行動できるのは子供だけである。

自分の立ち位置を定め、周りを見、行動しなくては排除されるだけである、いつまでも親の元のには居られない、それが次男坊3男坊となれば尚更である。呪詛も返され皆正気に戻ったのも原因だった



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