答え

「……はぁ……」


自室で一人、俺はため息をつく。

原因は蒼山達の勝手な決定と自分のステータスだ。

一人になれば状況整理をして落ち着けると思ったが、現実を確認するたびに心がブルーになっていく。

そして、今一番の問題は「カルマ」と「ユニークスキル」だ。

後に王女様から聞いた話では、カルマの色が白に近ければ近いほど「善」。

逆に黒に近ければ近いほど「悪」なのだそうだ。

勇者は皆カルマは白で、魔王は紫。

つまり俺はこの世で一番の「悪」つまり

存在悪だ。

ちなみに聖属性の4人は白で、他のクラスメイトも赤や青、緑や黄色など普通の色だ。

これだけでも十分面倒なのだが、俺にはもう一つ問題がある。

それが「ユニークスキル」だ。

頭に流れてきた知識にも王城の書庫にある本にも、「禁忌の世界」なんていうものは載っていなかった。

まだ使っていないからわからないが、相当ヤバそうだ。

だが、「黙示録」はあった。

これは、昔神々がこの世の希望を創造していた時代に一人の邪神が、この世の絶望を創造した。その邪神はあまりに強く凶悪であった為、神々が命を懸けて滅した。

しかし、その邪神は最後に自分の力の全てを一つの書物にしてこの世に隠した。

その書物こそが、「黙示録」だ。

ここまで確認して、俺はある可能性に辿り着いた。

それは、


「…これ、俺が魔王よりヤバイって知られたら…俺…殺される…な」


そう、これで俺のステータスがバレでもしたらあいつらは、魔王より先に俺を殺そうとする。

これは少し考えれば辿り着ける、そして、決してたどり着きたく無い現実。

だが、この問題の解決法も直ぐに辿り着ける。

その答えは、


「俺が…誰よりも強くなれば…そうすれば問題ない」


「そうすれば俺は…『目立たず』生きていける」


だがこの時の俺は気づいていなかった。

この選択が、俺自身を全く別のモノに変えてしまうということに。




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「そういえば、幸ちゃんのステータスってどうだったんだろ?」


「そういえば、彼はあの時全く他人と関わってなかったわね」


「はっ!どうせショボいステータスで見せたくなかったんだろうよ」


「どうだろうね?とりあえず皆で魔王を倒す訳だから、彼のステータスも確認しなきゃね」


「とっても強かったりして〜!」


「そしたら頼もしい限りね!」


「まぁ俺達よりは弱ぇだろうけどな」


「まぁ明日の訓練の時にでも確認しようか」


そしてこちらも気付いていなかった。

自分達が今、絶対に関わってはいけない存在に関わろうとしている事に。


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