第8話 レーシングドライバー

明け方から弱い雨が降っていたのでママッタロスに車で送ってもらうことになった。

僕の家から高校は近いので普段は徒歩で通学している。

しかし今日は朝から雨なので、うちのママストテレスが車を出すと言い張った。

高校生にもなって親に車で送り向かいをしてもらうのは少々照れる。

まあでも毎日というわけでもないし。

ママプラストスが年に数回という雰囲気を出すので後部座席にしぶしぶ乗った。


徒歩で通学できる距離だけれど車なら快適だ。

雨にぬれることもなく高校の近くの信号まで送ってもらうことになった。

僕は後部座席の窓から雨の通学路を眺めていた。

ファミレスの角を曲がったところで遠くを歩くウミノと目が合った。

僕は気恥ずかしくなってすぐに目をそらした。

高校生なのに雨の日にママクレイデスに送ってもらうなんて。

それをクラスの美少女であるウミノに目撃されるなんて。

恥ずかしい。


いや、まてよ。

もしかしたらこの雨だ。

こちらからウミノの顔は見えても向こうからは見えていないのでは?

車がブーンと走ればとりあえずそれを見るのは自然だ。

しかし中の人間、後部座席の僕の顔まで見るだろうか。

ウミノはこちらを認識していないのかもしれない。


高校の近くの信号で車を降りた僕は少し早めに教室に入った。

雨はザーザー強くなっていたが短距離しか歩いていない僕は乾いている。

後からクラスメイトがずぶ濡れで教室に入ってきた。

その中に美少女アンドロイドのウミノの姿も見える。

もしかしてウミノの方からアイコンタクトがあるかと備えたが無かった。

やはりウミノは車内の僕の顔が見えていなかった。

全くとんだ心配性である。


4限目の物理の時間にやたら後ろから視線を感じた。

おもわず後ろを振り向くとウミノが教科書を両手で持っていた。

僕にアイコンタクトをかましながら。

彼女はレーシングドライバーのように教科書を両手でグリンと回した。



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アンドロイドは電気制服ボタンを受け取るか? おてて @hand

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