第6話 チップ

美少女ウミノは理数系の科目が良く出来る。

主に数学や物理化学の成績が良い。

定期テストでは満点を連発しているそうだ。

さらに暗記系の歴史なども良い点数を取っている。

ウミノの頭には脳の代わりに人工知能のチップが入っている。

だから暗記力や論理的思考力が抜群に高い。

僕などは普通の成績なので、ふーん、という感じだ。

一般的に女子よりも男子の方が数学などは得意である場合が多い。

まあウミノを性別で考えるのも変な話だ。

彼女の思考は人工的なものなのだから。


美術の時間に油絵の授業があった。

授業では隣の席の生徒同士でお互いの肖像画を描く課題が行われた。

男女でお互いにペアを作るのはトラブルの元なので性別分けされた。

男子は男子の肖像画をお互いに描く。

女子は女子どうし。

せっかく共学なのだから男女混ぜれば良いのにとは思ったが。

まあトラブルになるね。

僕は男子のヨシダとペアになった。


もうすでに数回の肖像画の授業が行われている。

ウミノの周りに数人が集まって彼女の絵を見ているようだ。

ザワついてるみたいだ。

僕もベンジンを取りに行くついでにチラ見をした。

彼女の絵は独特の雰囲気を醸し出していた。

なんというか、世間的に上手い絵ではない。

人物の輪郭はあまり上手くなく子供の描いたような絵だ。

さらに色使いも現実の色とはかけ離れていてカラフル過ぎる。

青や赤や白が原色で大胆に使われていて目が痛い。

抽象画のような独特の色彩感覚だ。

例えていうと北欧の絵本といった感じか。


ウミノに美的センスはあるか?

描いた絵を見たかぎりでは彼女に美的センスはないようだ。

しかし美しいウミノに美的センスが無いのはおかしな話だ。

ウミノは先祖代々、何代にも渡って美男美女の系譜のはずだ。

つまり先祖が美男美女を見抜けなければ遺伝的にそうはならない。

先祖がそろって美的センスにあふれているのだからウミノも同様であるはずだ。

彼女だけが全くセンスが無いなんてこと、信じられない。

あ。

まちがえた。

ウミノの顔や体は工場で作られたものだ。

彼女の顔が美しいのはメーカーの設計者の美的センスの問題だ。



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