「SUN☆げっちゅ☆key!!〜虎になったおっさん(36)、異世界で無双する〜」★★★☆
今回読んだのはマンデーノベルス出版、
かのワナビというワナビの心を痛めてきた名作をモチーフとしたおっさん無双、タイトルからの印象通り終始ギャグにはっちゃけた作品でございました。
以下あらすじ。
――――――――
冴えない三十代男性である
「その声、我が友イーチョではないか!?」
「あ、多分人違いです」
「なんだ、ただの喋る虎か」
「虎が喋るのはいいんですか?」
牙は鋭く、頭と肉球は柔らかく。虎になったおっさん、フレンズと友にチートなタイガーボディで無双する!
――――――――
『会社を出たら、歩道に虎がいた。』
ぼんやりとして覇気の無いバツイチ男、伊調琥太朗(36)。生きる上での目標を見失いただ生活するために仕事していた男が、昼食のため会社の外に出て虎と出くわすところから物語は始まります。なんだこの最初の一文のインパクト。
追いかけ回されたあげく虎と共にトラックに轢かれ、気が付けば琥太朗は異世界で虎の姿に。転生者を管理する上位機関「転生課」のトラブル担当神・マドグチの案内のもと、再びヒトの身体を手に入れるべく、神の国への扉を開く「太陽の鍵」を探す旅に出る――というのがざっくりとした流れ。
同時に同じ場所で二つ以上の生命が死んだものが転生すると、その過程で魂と体が入れ替わるのはそれなりにある話とのこと(マドグチ談)。しかし今回の琥太朗のケースでは琥太朗の肉体はすっかり消滅したらしく、琥太朗の魂が虎の身体にお邪魔している状態。その消滅した琥太朗ボディーの補填として、攻撃スキル『
いやー、序盤から中盤にかけての山月記天丼芸には笑いましたね……。「その声~」の下りが五回くらいありました。最早袁傪が出てこないのが不思議なレベル。
「その声、我が盟友イチョルではあるまいか!?」
「あの、僕ってそんな普遍的な声してるんですか?」
琥太朗、毎回律儀に応答をして草むらから出ていくのやめてくれ、笑うから。
さてさてマドグチの紹介で琥太朗は同志と出会い、中身ヒト、ガワが人外な、地球以外の出身者もいる転生不具合メンバーが集まります。
・和田(ワオキツネザル)
・橋本(ハシビロコウ)
・リドラ(体長10mのドラゴン)
・サシャ(よく分からん丸っぽい異形の魔物。猛毒と千本の触手を備え、ガ○ラ式の回転飛行で時速200kmで飛ぶ)
そんでまぁ……後ろ二名から分かるようにヤバいやつが大半らしいんですよねこの世界の転生不具合者(補填でスキルまで貰ってるわけだし)。故にこの世界の人間は転生不具合者を討ち滅ぼすべき対象として見ているわけです。そりゃそうだ。
ゆえに近隣の王国から派遣された討伐隊が、琥太朗達を打ち倒しに来るわけですが……そうだよね、勝てるわけないよねこんなのに。サシャが本気出すまでもなく、橋本さんの眼光で隊の三割が倒れたものね。琥太朗も「がおー」しか言ってないし、なんだこれ。
かくして比較的穏便に討伐隊を下した琥太朗達は、自分達に敵意は無いことを示し、太陽の鍵について何か知らないか尋ねるわけであります。そして巡り巡って国王との協議の結果、王国の脅威となっている転生不具合者、『
かくして一行はその
さてさて読んでみた感想ですが、キャラの立ち具合とかギャグセンスはとてもキレがあってずっと笑っているような感じでした。マドグチの中間管理職感とか、サシャの人格がやけにカワイイのとか好きです。あとはルビの振り方とかトンデモナイ感じなの好き(ヴァルアリス様はいつ読みましょうかね……)。あと本編であんまり深掘りされなかったんですけど、ワオキツネザルとかハシビロコウとかと一緒に死ぬってどんなシチュエーションなんですか? シンプルに疑問である。
しかしまぁ、序盤も序盤ということもあってキャラ紹介と世界設定、この作品でのストーリーの展開の雛型を提示した説明巻であったことも確かかと思います。二巻が出る前提で単巻でお話がまとまっていないのは自分の中では結構なマイナス点。一応公式Twitterを見ると続刊はわりかしすぐ出そうな雰囲気があるので、ちゃんとした評価はそれを読んで次第ですかね。
でも大コケすることもなさそうですし、ここからさらに袁傪――じゃないやエンジンがかかる可能性も十分ありそうですしね。その辺の伸びしろも鑑みて星3つ半です。良くも悪くも二巻次第。続刊前提で読むことができて、ギャグコメが好きな人なら合う人は多いんじゃないんでしょうか。では今回はこのくらいで。
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