第11話 ランク試験②
ランク試験は続き、次にカルディが呼ばれた。
試験官の前にゆっくりと歩いてくるカルディを試験官はじっと見つめる。
試験官はカルディに注目していた。
カルディの契約しているのがとても凄い存在だったからだ。
実際に試験官は試験の度に世界魔導管理局から派遣される。
だからカルディの実力を知らなかった。
万年最下位のカルディの実力を。
知っていれば注目などしないだろう。
そんなことも露知らず、期待を寄せる試験官の声で試験が始まった。
カルディのランクは『E』なので、試験内容は初級魔法の連続発動だった。
試験開始と同時にターゲット(模型人形)がカルディの周囲に出現する。
ゆっくりと動くそのターゲットに向かい、カルディは右手をかざす。
「我が刃!敵を貫け!」
叫ぶと同時に右手の隣からゆっくりと剣が姿を現す。
「アイアンブレード!」
剣はターゲットに向かい飛ぶ。
ターゲットに直撃した。
しかし、ターゲットは少し欠けた程度で破壊までは至らなかった。
カルディはもう一度、魔法を発動するが、先ほどの剣よりも少し小さめの剣、見た目は短剣ほどの物しか出なかった。
案の定、ターゲットを破壊することは叶わなかった。
カルディの息が上がっている。
その様子に気付いた試験官が
「それまで!」
試験終了を告げた。
結局、カルディは合格することが出来なかった。
そのあまりにも残念な結果に試験官もため息をついた。
カルディは深々と試験官に頭を下げ、左手の腕輪を撫でながら試験会場を後にした。
「魔法の発動速度に問題はないと思いますが、いかんせん全体の魔力が小さすぎます」
「確かに……しかし、あの存在であの魔力は不自然なだと思うのだが……」
「ええ、発生魔力はおそらく大きいと思いますが、魔力の運用と魔力を一時的に貯蔵する器が極端に小さいのではないでしょうか?」
試験官を含む、世界魔導管理局の職員達はカルディの事について話し合っていた。
カルディの存在でこの不出来はあまりにも不自然だと感じたからだろう。
この世界における魔法という奇跡は、契約する存在によってもたらされてる。
その存在の位が高ければ高いほどより上位の魔法が使用可能となるわけだ。
加護者が存在の魔力を一時的に借り受け、自分の体内に一度留める。
魔力を留めることにより、連続して魔法を発動することも可能になり、力加減も調整できる。
しかし、魔力が高いほどその量は膨大になり、自分の体内に収まり切れない場合は魔力が暴走する。
カルディはその器が小さいと判断されたのだ。
それは加護者として致命的な欠点であった。
魔力の器は人によりそれぞれ違うが、精神的な要素でその大きさが決まると言われている。
何事にも負けないと不屈の精神の持ち主なら、その器はかなり大きい。
逆にすぐに逃げ出し、隠れてしまうような脆い精神なら、器は小さい。
「しかし、あれだけの存在と契約しているです。魔力の器が小さいとは考えにくいです」
「確かにそうだな……存在は加護者の精神力を第一に見るからな……自分と契約できる器なのかどうかと……」
存在にしてみれば、これから共に過ごす相手が自分の力を発揮できない者だと困る。だから契約する際にその者の器を計るのだ。
ゆえに位の高い存在と契約している者はランクも自然と高くなるというわけなのだ。
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