やはり人間は無理。人間無理部。


大澤:たぶんだけど船頭多くして状態だと思うんですよね。やっぱり自分の小説は自分の作品だから、自分の作品として思う通りにコントロールしたい! って意識があるのかもしれないけれど、そうは言ってもライトノベルって、大勢の人で一緒に作り上げていくプロダクトっていう側面が大きいじゃないですか。わたしはあまり自分の作品っていうものにこだわりがないので、原稿投げたあとは「もう好きにしてくれあとはあなたの仕事だ」って感じで一切なにも言わないんですけど、毎回150億点みたいなパーフェクトな本が勝手にできあがってくるので、信頼して任せてしまえばいいんじゃないかな~なんて気楽に思いますけどね。もちろん、それぞれの作家さんに、それぞれの事情があるのでしょうけれど。


秋永:本当に大澤さんはよい作家だと思うよ。


大澤:あのパーフェクトなプロダクトの一番目立つところに自分の名前があることじたいが不思議じゃないですか? いや、自分はただ文を書いただけなのでってなる。出来上がった本を見ると、自分はこの製品の製造工程のひとつを担っているに過ぎないのだって、毎回思います。


秋永:それはめちゃくちゃ本が好きな人の発想ですよ。小説家ということにこだわりのないひとが素直な愛に満ちていて、自分が小説家であることにこだわればこだわるほど愛が濁ってゆく……愛とは……人間とは……。


大澤:やはり人間は無理。人間無理部。


秋永:このへんどうなるんだ、使えるのでしょうか。編集でうまいこと削ってくださいね。


大澤:分かりました。(←)


秋永:パンツは履く。それは嘘をつくということではなく、マナーなのだ。


大澤:対談てきには「五年後の自分のために書いていきましょう」で終わっておくとすごく綺麗っぽい。対談を重ねて至った結論が「人間は無理」もわらうけど。えっと、なんの話だっけ? あ、そう。紙の本、製品としてのライトノベルの話。時流てきには劣勢っぽいですけど、著者てきには生き残ってほしいですよね、紙の本。やっぱり、見本が届いたときのテンションの爆アゲ感はプレミアムです。


秋永:紙の本、私も好きだな。あんまり偏愛を示すひとはそれはそれでちょっとアレな場合が多いけど。


大澤:でもちょっとね、最近の本は綺麗すぎる。もっとペコペコでもいいのよライトノベルっていう気持ちもあります。


秋永:文庫本は立派過ぎますね。ペーパーバックでない。


大澤:値段も高くなっちゃいましたしね。なんとかワンコイン……、せめて600円台には抑えたいみたいな気持ちがあって、なるべく薄い本を作ろうとは思っているんですけれど、わたしの気持ちとは裏腹に膨れる一方で、次は削る技術を洗練させていかないといけないのかなって思います。


秋永:あ、わりともういい時間ですね。どうですか? 大澤さんてきには掘れなかったテーマなど残っていますか?


大澤:ん~、なにしろ徒手空拳なので、言われてもパッと思いつかないですね。ひとまずはこんな感じでよろしいのではないでしょうか。


秋永:公開するからには、おもしろくてためになる読み物になってほしいですね。


大澤:そこそこ面白いコンテンツにパッケージできそうな予感はあります。少なくとも、わたしはとても楽しかったです。


秋永:よかったー。私もすごい楽しかった。大澤さん、みんなのお尻を叩いて、軽率に小説を書かせて、おもしろい小説が増えたらそれでいいのだ、ということをおっしゃるじゃありませんか。今回の私との対決(?)もその一環にちゃんとなれていたらいいと思います。


大澤:そこは受けとる側の問題なので、わたしの知ったことではないです(爆笑)。それでは、本日はずいぶんと長い時間お付き合い頂きましてありがとうございました。


秋永:こちらこそ、ありがとうございました。




2018/3/30 文責:大澤めぐみ

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