第9話

「はああっ?!

スタップディアーが出ただとぅっ?」

「え?はい…。

あ、これ、その時のドロップ品です。」

「…間違いねえ、こりゃスタップディアーの角だ…。」


―あら?もしかしてこれ、ヤバいですか?


村の北にある、薬草なんかがよく採れるという斜面地に向かうと、スタップディアーという鹿のモンスターがいました。

まあ何とか倒すことは出来たんですが、そのドロップ品を持って帰るのか大変でした!


だって、この鹿さんのお肉が30kgですよ?


そこらに生えていた蔦をロープ代わりにして縛り、担いで持って帰ってしましたけど、いや、重たかったです!

アイテムボックスなんてモノは、もっと高レベルになって稼がないと手に入れませんしね。


で、ですね、村にエッチラオッチラ帰って来て、ロッソさんに一応、報告しようかとギルドに寄った訳です。


「……ちょっと待て。

星2つのスタップディアーを倒したのかっ?

レベル1のお前が?」

「はあ…。」


あれ?

そんなにびっくりされる事でしたか?


「お前…、初めて"こっち"に来たばっかでレベルは1なんだよなあ?」

「はあ、そうですけど…。」


ロッソさん、なんだか難しい顔をしています。

そんなコワイ顔されたら、ただでさえ厳ついハゲなんで迫力満点ですよ?


「…獣系に強いビーストティマー職のマスタークラスだし、タレントのアシストがあれは可能か…?

いやいや…ど素人がか…?」


なんかブツブツ言ってます。


「あのー、なにか問題が?」


そう言うと、ハッと私がいる事を思い出したようです。


「いや、すまねえ。

スタップディアーといやあ、素人が無傷で倒せるようなモンスターじゃねえからな。

お前みたいなヒョロい奴が、よく倒せたなあって驚いたんだ。」

「私、ヒョロいですか?

一応、それなりに鍛えてるつもりなんですが。」

「いやまあ、"こっち"の奴らとくらべれば、ってこった。

考えみりゃあお前さん、妖精族だしなあ、何をやらかしてもおかしくねえわ!

ガハハッ!」


どうやら妖精族=非常識な奴らって事で、ロッソさん的に解決したようです。

ですけどそんなに非常識ですかねえ?

確かにスタップディアーってスピードもパワーもありましたが、それほど難しい相手には感じなかったのですが。


「それよりあの場所で、スタップディアーみてーな奴が現れたことだ!」

「あ、やはり、あまり無いことなんですか?」

「あたぼうよ!

あんな村近くで、出てくるようなモンスターじゃねえ。

あの斜面なら、出てきてせいぜいホーンラビットくれえなモンだ。

しかもそれさえ滅多に出てくるモンじゃねえ。」

「そうなんですかー。」


ホーンラビットは最弱モンスターのひとつです。

初めての冒険者が普通、最初にお相手にするウサギさんですね。


そんなモンスターですら滅多に出ない所に、星2つクラスのモンスターが出れば、ちょっと驚かれるのもうなずけるかな?


「うーむ、…こりゃ、一度見回りに出ねーといかんか。

あとは村のもんに、注意を呼び掛けとかんとなー…。」


ロッソさん、そんな事を言いながら、じっと私を見つめています。

あ、これは…。


「こりゃちょうどいい。

お前さんの実力を見るいい機会だ。

ちょっと付いてきな!」


…やはりそーなりますかー…。

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