その首を

江戸端 禧丞

ちょっと食事を

 人々が眠りに就いた頃、夜の闇の中を、へべれけになった青年が、くるくると踊るように軽い足取りで歩いていた。


 彼は、今日めでたくさらし首になったばかりの少女の頭部を喰らうべく、フォークとナイフを手に、鼻歌交はなうたまじりに首が乗った台の前で立ち止まり、少女の頭部に生えている髪を綺麗にりはじめた。


 睫毛まつげ眉毛まゆげ、うぶ毛と剃り終えた彼は、まずのど部位ぶいから頂こうと、切れ味抜群の愛用ナイフを使って器用に切り取り、フォークで刺し口に運んだ。


 が、突然、彼の頭部が硬いもので横からのフルスイングを受けた為、肉を口内へ入れ損なった。振り返った先にいたのは、コック長ヴィルフレード、アルフォンソは首根っこを掴まれて闇夜へ消えていった。

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その首を 江戸端 禧丞 @lojiurabbit

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