本音で語られる言葉は、それだけで向き合う価値のある情報だ。

 はじめてカクヨムでエッセイを読みました。
 切り口というか、議題が直球でいいですね。
 いまの日本社会の閉塞感そのものに声を上げた、若年層の生々しい意見がひとつの参考になりました。

 正直なところ、著者の意見にはうなずきが半分、「それはどうなんだろう?」が半分、といったところです。
 ぼくと著者とでは双方の属性にけっこうな距離があるからでしょう。
(性別が違うだけでも、ものの見かたは宇宙のように距離があるはずです)

 それでも最後までしっかり読めたのは、先にも述べましたが、このエッセイが「直球の、生々しい声」だったからです。

 話は変わりますが、ぼくは自己紹介というものがとても苦手でした。
 出席番号順に黒板の前に立たされて、自分がどんな人間であるか発言させられるアレです。
 嘘です、見栄を張りました、いまでも苦手です。

 とにかく、ぼくの自己紹介はたいていの場合、自分が何者かを言えずにただ事実を述べるだけに終わります。

(好きな食べ物はハンバーグです)
(好きな色は青です)

 本当なら「自分はどういう性質の人間であるか」とか「どういうものの考え方をするか」といったふうに、直球の本音を言うべきだし、それが自己を紹介するということです。
 ぼくが青色アホアホハンバーグマンであることは、心の底から出てくる声ではないし、そんな情報には価値がないのです。

 でも、このエッセイはそうじゃなかった。
「ちょっとばかし、思う事がありまして。」というタイトル通りの、桜木彩という著者の頭の中にあるものを、真摯にひっくり返して丁寧にぶちまけたものです。

 世の中にはいろんなものの見かたがあって、意見も様々だけど、本音で語る言葉には、それだけで正面から向き合う価値があると思います。

 もし良かったら、執筆の間に筆を止めた時、あるいはいつもの作品を読むのが一段落した時。
 そういった時間に、著者の「本音」と向き合ってみませんか?

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