End Rool

あたしは、無言で階下にある刃物を持ってきてミライの首に突きつけた。

やるべき事は、

ミライを止めること。

皆を巻き込まないこと。

この時のあたしも、ミライと同じくらい血迷った事を言った。

完璧に仕組まれた、台本通りの人生。

すべてに裏切られた、という絶望感から自分に諦めをつけていた。


所詮、あたしは両親の愛の身勝手で生まれてしまっただけだ。


「な、何を・・・」

ミライが動揺しているのは明らかだった。それを尻目に、あたしは刃物を強めに押し当てた。

きっとこの時のあたしの顔は、笑顔を薄く浮かべながらも、涙で醜く歪んでいたと思う。

「頑張る必要なんてないよ。

悲しかったんでしょ?

辛かったんでしょ?

人間から人形に戻りたくなかったんでしょ?

だから・・・人間も、自分自身も滅ぼそうと思ったんだよね、幸せな思い出だけを持ったまま、少しでも皆と一緒にいるために。

あたしもね、人形でいる間、結構辛かった。ミライの感じていた寂しさが分かった気がする。

でも、ほかの人は巻き込むべきじゃない。代わりにあたしが一緒にいてあげる。だから、他のみんなは許してあげて。あたしは、死んでもミライといてあげるから。

もうあたしはいいから」

ミライの瞳が揺れた。頬を一筋の涙が伝う。

「でも、未来!」

あたしはミライを手で制した。

「なんで今更泣くの?これが夢だったんでしょう?」

「違う!あたしはこんなこと望んでなんて・・・!」

「嘘。人間になったって、どこかで寂しさを押し隠してたはずでしょ?

それに・・・、どのみち人間は死ぬようにできてる。その死ぬ時が数十年縮まっただけ。

でも、今のあたしの性格は、きっとこの先転生しても二度と現れないし、この顔になることもない。でもね、人形の魂は同じところに宿り続けるでしょ?だから、きっとどこかで会える。

だから、ミライ」

あたしは、右手に持っていたものをミライに握らせ、あたしの首筋へと持っていかせた。

「な、をするつもり!?」

「…言ったでしょ、一緒にいるって」

ミライの手の震えを冷たい刃があたっている首から感じていた。少しの雑念を忘れるため、あたしは目を閉じた。


「わぁ、お人形さんだ!」

「ミライ、一緒にあそぼう・・・」

「ミライ大好き!」

「ミライは大切なあたしの友達!」


幼い頃のミライとの思い出が、走馬灯のように駆け巡る。


もう、心残りなんてないや。


やり残したことは、生まれ変わった時にやればいい。

今はミライと一緒にいてあげよう。

そして、生まれ変わったらあたしのやりたいことに付き合ってもらおう。


「じゃあね、後で会おう」


互いの手に強く力を込め、そして手を引いた。


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Ever Doll・End Rool 大祝 音羽 @senasyugetsu

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