惹かれる人

 浮気性だった俺は彼女をどれほど泣かせてきたのだろうか。

 好きであるということは間違いないのだが、マンネリがあまり好きではないので刺激を求めてしまうのが悪い癖である。


 発覚する度に謝り倒していた。

 彼女の泣きはらんだ瞳を見ていると胸が痛んだ。自分の愚かさを呪った。

 いつも「次こそはこういうことをしないように」と誓っていた。


 何気ない日常にある幸せというものに気づけばよかったのだが、若かったのだろう。

 当然のように別れを告げられる。

 自分のしてきたことを呪っていても過去に戻ることはできない。

 涙を浮かべながら「いつも辛い思いをするのはもううんざりなの」という言葉とともに去っていった。


 暫くは次の恋を見つける気にならなかった。また相手を傷つけてしまうかもしれないと思ったから──

 ワンナイトラブがなかったとは言わないけれども、恋愛ができなくなっていた。

 このまま独り寂しく生きることになるんだろう──そう考えていた。


 しかし、運命の出会いが訪れた。

 二度とあの過ちを犯さないようにと胸に刻んだ。


 悪い癖も出ず交際は順調で結婚の話も出始めた頃のこと。彼女が両親に紹介したいと言い始めたし、そろそろだと思っていたので、正装をして挨拶へと赴く。


 そして出会ってしまった。彼女と──

 滲む汗。顔で笑って心で泣いて。

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