祝杯

 過ぎ去りし宴を懐かしむ。


 あの頃は、ひとつの戦乱の時代に終わりを告げたと思っていた。隣国との戦いは勝利をおさめ、長い戦いで疲弊した皆は祝杯をあげたのだった。それぞれの功績を称え、疲れを癒す。


 しかし、それは始まりに過ぎなかった。


 隣国を支配下に置くということは、さらにその隣国が存在することになる。

 武力による制圧という事象は、各国の脅威でしかなかったのだ。同盟を結び、こちらを滅ぼさんとする。

 新たな戦争の幕開けだった。


 具合の悪いことに、支配したと思っていた国も謀反を起こす。

 こうなってしまうと、一気に劣勢へと追い込まれるのも当然の結果だ。


 あの宴はなんだったのか。

 領土拡大や利権のために戦争を起こし、見事勝利をした。

 これからの益々の発展を願っての宴でもあったはずだった。


 ところが、現実とは非情である。

 最初に剣を構えた国は、気が付けば風前の灯。


 劣勢を極めたとき、権力者はひとつの決断を下す。

 それは和平交渉だった。


 最大戦力は未だに損耗しきっていなかったものの、このままではジリ貧だ。

 他国も戦の長期化は望んでいない筈だと踏んだのだ。


 平和条約締結のために各国へ使者を送り込む。

 戦いを仕掛けた国だったためなかなか信じてもらえず、幾人もの使者が帰らぬ人となったが、粘り強い交渉が実り、各国の首脳が一堂に会する場を設けることが出来た。


 終戦の宴も準備をしての、調印式。

 人々はこれで安寧の日々を遅れるということで、自然と笑顔が零れる。

 無事に調印も終わり、杯を交わすその時。


 合図とともに、各国のトップの首を斯き切った。

 あたり一面、血の海である。


 そして、王はこう告げる。


「これで統一をなしえた。宴だ」

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