第18話 温泉街

 温泉街といっても、もと居た時代の様に繁華街があるわけでは無い。けどそれなりにお店はあって、店先からいい香りがする。

「小太郎! 団子だ!団子! 」

 そういって団子屋の店先に駆けていってしまう。

「主、お団子だけじゃなくて温泉には温泉の食べ物があるんですよ! 」


 氏康ちゃんを追いかけ、店先に置かれている腰掛けに座って、今朝の鶏卵のあまりを使って作っておいた温泉卵と匙を差し出す。

「えっ、ただの卵じゃないか…。小太郎、妾は甘いものの方が好きじゃ」


 そういって返してくるので温泉卵の上に黒蜜をかけて氏康ちゃんに渡す。

「卵に黒蜜って正気か? 小太郎…」

 氏康ちゃんは疑いの目をむけてくる。

「騙されたと思って食べてみて」 

 そういって黄身を割って黒蜜と一緒に匙で掬いあげ、氏康ちゃんの口元に運ぶ。


「あーん」

 そういって氏康ちゃんの口に入れると彼女は顔を真っ赤にさせて俯いてしまう。

「意外と美味しいですよね? 」

 感想を聞くと氏康ちゃんは頬を膨らまして

「味が分からないではないか! 小太郎のうつけ! 」

 と恥ずかしそうにしていた。



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