第28話 高い壁(だったはず)


別に生体レベル以外に高い所ないのに、なんで規格外なんだろう?


てか、生体レベルって何ぞ?


「ああ、自分のだけ見ても基準がわからないわね…」


不思議そうに首を傾げ、自分の紙を見る私を見てレーナさんが言う


「はい、規格外ってなんでですか?」

「私の子供の時のがまだ残ってたはず…。

探してくるから待ってて?」


レーナさん物持ちいいんだね。

子供の頃の紙切れって残せるものなの?


私は無理だな!成績表とか1年で失くした覚えがあるもの!


「あったわ、これこれ。」


はい、と言って渡してくれた紙は少しボロボロだけれど普通に読める物だった。


そこには、私のものとあまり変わらない数値が並んでいた。



―――――――――――――――――――


種族:獣人(兎)

性別:女

年齢:5


生体レベル:F


体力値:E-

攻撃値:F

防御値:F


MP:--

HP:F


〈装備〉



――――――――――――――――――――



「えっと…?生体レベル以外あまり変わらないと思うのですが…?」

「そう思うでしょう?そこもおかしいけれど」


どういう事だ?生体レベルについては分かるけど…、他はそんなにじゃないの?


何ならレーナさん私より体力値上じゃない?


「それじゃあ、まずはこのランクの付け方の話からしましょうか?

そしたらきっと、納得がいくわ」

「お願いします」






―――――――――かくかくしかじか…


で終わらせたらダメだよね?

はい、説明しますすみませんでした。



まず、生体レベル。


これは年齢に対する強さの度合いらしい。

だから私は年齢に対してランクA+だからここはまあ規格外だろう。


うん、なんとなく察してた。



それで、その他の数値。


これは全部で…えっと何段階だっけ?

一番下が『--』って表記で、そこから『F-』から順番にアルファベット順でラストに『S』って言ってたから…6×3+2=20か


そう考えるとそこまで規格外じゃないって思うやん?思うやんか?

私も思ったから正直に言うてみ?


だがしかぁーしっ!そう簡単な話じゃないと。


それぞれの壁が高いんすよ…。



例えば『--』から『F』までは成長とともに少しずつだが上がっていくらしいのだが…、それでも5年ほどかかるらしい。

これだけなら2年くらいフライングだね!


だがしかぁーし!Part2!

『F』と『F+』にはだいぶ差があるらしい。


例えるなら、Fが単なる5歳児、道端や空き地で走り回ってるガキンチョだとする。

そうすると『F+』はもうそろそろ初級から中級冒険者かな〜くらいの人になるらしい。


エア曰く、

『初級から中級と認められるにはソロで森の初級エリアから中級エリア付近を散策できて、なおかつ採集系以外のクエストをクリア出来るくらいですです〜!』らしい。


わかりやすく言うと、多分だけれど単なる5歳児と、高校の全国大会で優勝出来るくらいの…何がいいかな、柔道部員とか…剣道部員とか…、弓道部員とか、そんな感じだよ?


全部出したよね?格闘、剣、弓…魔法は無理



そりゃあ規格外だわな!

だってどうするよ?高校の全国大会優勝者がぽっと出の5歳児に負けたら。

手加減したと思うでしょ?それが違ってちゃんとガチでやってたとしたら?


柔道なんて、特に無理でしょ!だって体格差が迷子だよ?想像出来る?

5歳児に投げられるごつい高校生のこと。

私は無理だ。そこまで想像力豊かじゃない。





「これを踏まえて…フィアちゃん、あなたがすごく規格外なのがわかったかしら?」

「えっと、まあ理解しました。

でも昨日の冒険のせいってことは…」

「ねえと思うぜ?

大抵、最初に冒険行く時の初級冒険者は中級のやつとかと一緒にパーティ組んでいくんだけどよ…、


今まで俺がここのマスターになってから、たった1回の冒険でランクが上がった奴は居なかったぜ?」


なんと!?もっと頑張ってよ冒険者〜!


まあ、よく考えたら1回の冒険で初級から中級になれたら凄いよね。


ちなみに、レーナさんの体力値が高いのは、ここではないが森に住む種族で、食料調達の術を幼い頃から学ぶので体力は必然的に付くものらしい。


狩りも学ぶって言ってたから兎でも肉を食べるのかな?兎って草食じゃないの?

ファンタジーだね!リアルファンタジーか。



「えっと、取り敢えずこれ、ありがとうございます」


説明を聞き終え、レーナさんに紙を返す。


「いえいえ、お役に立てみたいで良かったわ」

「それで、私はどうすればいいでしょう?」

「「「…………、」」」


えええー、みんな黙りぃ〜?

仕方ないだろうけどさ…


「そうだ!」

「あなたの意見は信用出来ませんがどうぞ」


ヨシュアさんが閃いたようだ。

変わらないあつかいがここにある…ってか?


「王都の学園とかどうだ?」

「“どう”と言われても、恐らく6歳になる時に元から入学する予定だと思いますよ?」

「ええ、その通りですね。

6歳以上の子の入学は絶対ですから…」


初耳だ…。

しかし、この国は教育環境がしっかりしているらしい。6歳とか小学校かよ。


「それもそうか!昔のことすぎてな!」


ガハハッと豪快に笑うヨシュアさん。


「相変わらず戦闘以外では役たたずですね」

「私もあまり期待はしてませんでした…」


ヨシュアさん、笑ってるけどいいの?

お母様にもアテにされてなかったってよ?


「まあ、何かあるまで保留にしましょう!

今やれる事なんて無いでしょうし」

「それでは遅いのでは…?」


お母様、結構適当なところあるからな…

あとの事はあとで考えよう〜みたいな。前世ちきゅうでの私かよ。


「私の子だもの!きっと何とかできるわ!」

「奥様がいいならいいのですが…、」


変な自身持たないで?!信用してくれるのは嬉しいけども!!

これとそれは違うでしょうよ?!

ていうか、レーナさんも引き下がらすにもうちょっと粘って?!




とまあ、そんなこんなでその日は特に対策を取らずに…てか、考えず帰宅した。


フォレストウルフさんは話の途中で飽きて、小型化して私の膝で寝ていた。平和だ。





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