第9話;聖女と聖女の里

此処は人間の国

レンハント王国の首都ホーミングの教会の奥殿

広い部屋の奥にある天蓋付きの大きなベットの上で、裸の男女が絡み合っていた。


「うっ・・・・」

男の下で、這いつくばり、耐える様に体をこわばらせている若い女性


「はぁはぁはぁ・・・」

息切れしているのは教皇、齢60は超えている


教皇は女性の上から離れると


「くそっ教皇!いい加減に仕上がれ!変態野郎!」

汚い言葉を放つのは聖女と言われる女性だ


「はっはっは!マリアンヌ、早く私の子を産んでくださいね」

衣服を整えると部屋から出て行った。


すっと体のこわばりが解ける・・・

抵抗しないように魔法が掛けられていたのだ。


「くそ!誰が産むか!」

自分のお腹に浄化・洗浄・排卵阻止の魔法を掛ける


ジャランと足の枷が鳴る

「力が入らない、これくらいの魔法で魔法切れの症状が出るなんて、忌々しい枷だわ」


脚の枷から魔力を吸い取られて居る、逃げ出させないためと聖女の魔力を魔石に蓄積するためだった。


聖女マリアンヌ、私利私欲に走る教会の食い物にされている可哀そうな聖女だ。


マリアンヌから抜き取った魔力を使い、まるで自分たちが治療して居る様に見せかけて法外な治療費を取っている。地方の教会にはマリアンヌの魔力を込めた魔石を運んでそれを利用していた。


この世界では治療魔法が使えるものが世界に数十人しか居なく、殆どが教会の監視下に入っている。


マリアンヌを抱きに来るのは教皇だけではない、教会の幹部達殆どが、立ち代りやってくる。

たぶん孕むまで続くんだろうと思っているが、絶対誰の子供も産みたくない、どんなに屈辱を味わおうと、奴等の子供など!そう思っているマリアンヌだった。


「治癒能力を受け継ぐ子供が欲しいんだろうけど、子供が受け継ぐとは限らないのに」


マリアンヌは力を最近まで隠して居た、教会に軟禁されることが分かっていたから、家族と離れたくなかった。


ばれたのは、村がアンテッドの襲撃に遭ったから、とっさに家族を守るため浄化の魔法と治癒魔法を村に施してしまった。

たまたま、村の教会に中央の神父が巡回に来ていてごまかしようが無かった。


「皆元気かな?」


村がもう無いことはマリアンヌは知らない、聖女を隠していたとして皆断罪されていた、結界の中で監禁されているマリアンヌが知るよしも無かった。











ーーーーーーーーーーーー

「村の後だな・・・」

「そうね、廃村になったのはここ数年ね火事かしら?」

「死体の骨に大きな切り傷があるものばかりだな、盗賊?いや違うな、綺麗な切り傷、訓練された兵士によるものだろう」


ピョンピョンと遅れて来た一角うさぎ

「ああ、この村は治癒師を隠していたとして制裁を受けた村だな」

ルシフが言う


「どういう事だ?」


「この世界では治療魔法が使えるものが世界に数十人しか居なく、殆どが教会の監視下に入っているんだ、里心出さないように、心を折るために教会の暗部が、一族を根絶やしにしたり、小さい村なら皆殺しが定番だな」


「・・・・・酷い・・・・」


「だから、光属性の子供が産まれたらだいたい殺される、それで直、治癒師が少ないんだ、馬鹿だよな~ちょっと考えれば自分たちが自分たちの首絞めてるのにさ、気が付かない馬鹿な教会!」


「ルシフ!?」


「おっと、俺はなにもしてないぜ、普通に光属性の子は他の属性と変わらないくらい生まれる、それを欲で絡め取ろうとした人間のせいだ、俺は人間が絶滅して欲しいとは思って無い、このままだと病気のせいで人間は絶滅っするかもな、治癒師に頼ってばかりの馬鹿な人間共は!」


「そうよ!お医者さんは?」

「薬師は居るが、それも教会の監視下だ、医者は居ない、お前のとこの世界の医者、特に外科

のような考えはないよ」


「不思議だな」

「ハルト?」

「この村、凄く空気が澄んでいるんだ、理不尽に殺されたって言うのに」


「そう言えば、前見た村はアンテットが産まれて、魔物の巣窟になってたな、ここは何かが違う」

ルシフは不思議そうにしていた。



「今日はここに泊まろう」

「え?」

「この建物屋根もあるし、夜露はしのげそうだ」

「良いけど?」


夜が更けると外から賑やかな声がして来た


「ハルト!何か変」

「そうだな、この世界に霊魂が有るのは良いな」

「・・・・幽霊?」


外には盃を傾ける賑やかな声が聞こえる


家を覗いて

『おう!旅人よ!宴に参加しないか?』

「気がは早いと思うがな」

『俺らの娘を頼むな?』

「だから、気が早いって・・・」

中央広場に案内されると、杯を握らされ、酒を注がれる


「ハルト~意味わかんないんだけど」

「先読みの術者がいたんだよこの村に」


『マリアンヌが光の属性を隠して居るのは皆知っていた、我々を守るためと、この村が好きだと何時も言ってくれていた、離れたくないと、魔物の多い森の近くで暮らすす我々には、明日の命も分からない、彼女は我々の女神だ』


『俺らを助けるために今、辛い目に遭っている、未練でこの地を離れられない』

『マリアンヌの幸せが我々の幸せだ』


ローブをまとった老婆が現れる

『我の先読みで我々が死ぬことは解っていた、そして霊魂になってマリアンヌを助けてくれるおぬしを待っていた、マリアンヌに伝えてくだされ、誰も恨まず、自分の幸せを考えて生きてほしいと』


「・・・・解った、他に希望は無いか?出来る事ならば聞こう」

『我々の墓を・・・・』

「解った」


『夜明けまでまだ時間はある!宴を続けよう!』

朝まで宴は続いた・・・・


朝日が昇ると、村人は光となって天に昇って行った


「之奈、泣いているのか?」

「うん、この世界に来て、こんな優しい気持ちになったの初めて」

「そうだな、此処にいた聖女は魂の綺麗な人だったんだろう」


ガタン

「おいお前ら!また、俺を置いてくつもりだったの・・・・・どうしたんだ?」


朝までぐっすりのルシフが周りに二人が居ない事にあせって出て来ていた。


「さて、王都の教会だっけ?」

「中央の教会の奥に居るらしいって言ってたわね」

「エルフの里は後回しでも良いか?之奈」

「いいわよ!この人たちの希望を聞いてあげましょう」


そういって白骨死体を見る

周りに何処から出て来たのか酒樽が幾つも転がっていた


「酒樽?昨日こんなものあったか?」

ルシフが不思議そうにしていた。


「墓を作るぞ」


そう言ううと、村全体に魔法陣が広がる


「凄い」

建物と遺体が中央に集まって塔を作って行く


「鎮魂の塔!?」

「そうだ、この世界ではよく作られてるよな」


周りに石の柱が8方向に置かれ、塔と石の間に旗が渡される


「これは前の管理者が考えた、魂を輪廻に戻りやすくする装置・・・」


「お前の前の管理者は良い奴だったんだな」

「そうね、魂をそのままにしておくとアンテッドになるんでしょう?」


「これに浄化の魔法を掛ければ完成だ」

「凄い!魔力」

「この辺一帯は向こう1000年は浄化の魔法が効いてるので魔物は寄り付かないだろうな」


「さて、王都の聖女の元に行くか?」

「?おい!どういううことだよ!聖女?なんで?え?」


「でハルト、この分厚い本の山は?」

「ん?医学書」

「え?」

「この世界の言語に翻訳済」

「え?」

「こっそり、図書館や、医学に興味ありそうな人間や亜人にばらまこうと思って」

「何時の間に」


「この回復ポーションの量は?100万本?いつの間にどちらも私のストレージに」

「眷族だから俺は自由に之奈のストレージ使える、ゴメン言って無かったな?俺のストレージは出すときは許可がいるが之奈は見ることが出来るぞ」


「うーん驚かないけど、一言欲しかったな?いきなり物が増えててビックリよ」


「さて、教会へ行こうぜ」


がしっとルシフの足を掴んで空に投げる

「なげるなー!!!ぐえっ」

バシとジャンプしたハルトにキャッチされると王都に向かって空を行く

横を之奈が変化した”しらさぎ”が並走する。








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