だれのためでもない救済の季節

柳なつき

はる

はるのなかには さくらがあって

はるのそとには こおりがあります



こごるあなたを あたためるために

しずむきもちを なぐさめるために


はるよこい、とひとはいうけど。



はるは、

あなたのためにくるのではない

はるは、ただそこに あるのです



それでもはるは

あたため

なぐさめ

さくらをさかせる




そんな春が優しくない、などと

いったい、だれに言わせましょうかね。




はるよこい、

はるよこい、


こごったあなたも

しずんだきもちも

せつないわたしも



咲かせておくれ、

どうしようもないこと

すべてをさくらにしてしまえ、



一面のさくらばたけにしてしまえ。



はるよこい。

はるよこい。

春はだれのためでもなく。

だからわたしのためにあるから。




はるよ。

こい。










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だれのためでもない救済の季節 柳なつき @natsuki0710

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