第一話 目覚め

人間原理というものを知っているだろうか?

「宇宙が人間に適しているのは、そうでなければ人間は宇宙を観測し得ないから」というものである。とある学者はこれを世界が我々に適して存在するのは我々知的生命体に観測させるためだと考えた。

そのように考えた時、我々に適して存在していた世界を、住むことのできないくらいに歪めた人類はおそらく観測者の役目を放棄したのだろう。


人類のいなくなった世界で、я型オートマタй35型ミールが最初に思ったのはそんなことだった。人類がこの世界を離れて一世紀が経とうとしている。ミールは周辺の生体反応を探るがなにも見当たらない。それもそのはずだ。あの大戦後、生き物はその数の多くを減らしていたし、彼女が目覚めたこの極寒の北の大地に生物がいようはずがなかった。


私は何をすればいいのだろうか。彼女は自問する。人間の介護や世話を担当するя型オートマタ。しかし人間がいない世界において彼女の役目は無かった。だが、である彼女にという概念は存在しない。


とにかく何か役目を見つけないと。そう思い彼女は彼女が目覚めた研究室の一室を後にしたのだった。

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