佐藤惣一の優越

『え?行くんだ?』

「行かなかったら行かなかったで、後から騒ぐだろ?」

『騒ぐってなによ!』

「じゃあ帰った後、絶対に話題にしたり、あの洞窟行きたーいってアピールしたりしないって誓えるか?」

『それはムリ』


そうだろうな、とは思って居たけど本当に即答されるとそれはそれで腹が立つ。コイツを置いて帰ってやろうか、と外を見るが雨はやはり降っている。ザァザァでなくドコドコッという音を奏でいて、洞窟の先へ進むのともはやどっちが危険なのか分からなくなるほどだった。


いや、洞窟を進もうと思ったのはそんな理由では無いけれど。


「レイチェル、その端末のライトを使うとしてどんくらい持つか分かるか」

『さぁ?』

「雨の中にぶん投げてやろうか」

『聞かれたから答えたのに!?』


そういえばそうだった。レイチェルを電子端末の妖精?AIか何かのように勘違いしてたらしい。俺とした事が……俺とした事が!むしろまるっきり反対の、それこそレイチェルは土偶とかピラミッドのような存在であるというのに。


どうも俺は超展開に頭が参ってるらしい。でもちょっと考えてもみて欲しい。『雨宿りした洞窟の奥に、コミュニケート可能そうな生物が存在する』という状況を。どこのファンタジーだ。いや、ポケットなモンスターか?ともかくワクワク少年スピリットを揺るがす事態なのだ。


『サトー、真剣に聞くんだけど』

「ん?」

『なんで進もうと思ったの?わたしにはとても突然の死!って感じで納得湧かないんだけど』

「なんだよ突然の死って」

『それほど驚きの展開なの!!分かれ!!』

「なんからしくなく本当に慌ててるのは分かった。えーーと、レイチェル、お前俺の目のことって知ってたっけ」

『シュガーがなんか言ってた気がする。光るんだっけ?』

「光ってたまるかよ」

『じゃあ他人の技をコピーするんだっけ』

「出来たらそりゃ強いけど、そんなの使えるならお前に魔術の準備頼まないよな?」

『あ!アレだ!自害せよランサーってやつ!!』

「もはやそれ目じゃねぇよ!正解は魔眼でした〜。さてはお前、ぜんぜん知らないな?」

『いや、知ってるけど?知ってるけど、ここはサトーに言ってもらうのが正しい気がする』

「そうですか。まぁ詳しくは今度話すとして、お前を見つけたのは魔眼の力だ」

『え?マジ?』

「ここでウソつく意味あるか?無いよな。で、その魔眼によりますと、洞窟の奥にお前っぽいのが居ます」

『………』


レイチェルでも絶句するんだな、とおかしくなる。端末によって喋れるようになってからというもの、端末が壊れるか心配になるほど喋り倒していたのに、と思うと余計におかしくなる。流石に笑ったりはしないけど。


「だから、まぁ。洞窟の奥まで行っても大丈夫だと思うんだよな」



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