第6話 後日談

 

 それから半年ほど、ピクニックごっこを続けてみたけれど、「カラカラさん」は現れなかった。

 颯太は、最初は寂しそうだったが、やがて成長し、保育園で新しい遊びを覚えて、水曜日も友達といたがるようになった


 そして今年、颯太は小学生になった。毎日給食が出されるので、水曜日でもお弁当を作ることはなくなってしまった。

 私は颯太の成長を喜びながらも、時々寂しくなるようになった。そして、遅番の水曜日になると、出勤途中に遠回りして公園に行き、あの背中を探す。

 だが、もう彼はいない。


 「カラカラさん」は幸せだろうか。

 颯太はすくすく育っていって、四歳の時、しばらく影響を受けた人のことは忘れて、新しい刺激に夢中になる。

 けれど、私は、あの名前も知らない男性のことは忘れられないし、これからもそうだろう。そして、時に彼を思って唐揚げを作る。その唐揚げは、不思議と美味しい味がするのだ。


(了)




 ********


【あとがき】


「徘徊」していた男性と、シングルマザーのささやかな交流。そして、幼い颯太の残酷で衝撃的な言葉。誰に起こってもおかしくない未来を描きたかった。何か刺さるもの、社会的な作品が好きなので、これからも書いていきたいと思っています。


 猫野 拝

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カラカラさん 猫野みずき @nekono-mizuki

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