第3話置いていかないで…1

母のことを書こうと思う。

母は二十歳で親になったからなのか幼い部分が残っていた。自分のやりたいようにやる。子供中心だと本人は言っているけど子供の私から見るとそうは思えない。

置いていかないでと思ったことは何度かある。そのうちの一つ目。そんなに大した話ではないけど幼稚園児にはきつかったお話。


幼稚園の時、近所の友達の家に遊びに行くことになった。我が家は車がなかったので私は自分の自転車、妹たちは母の自転車に乗って。距離にして5キロくらい離れているお家。途中大きな坂道もあり想像しただけで無理だと思った。母に自転車で行くと辛いと言ったら突然怒鳴られ「じゃあおまえだけ来るな!!」と置いて行かれてしまった。

昼間はまだよかった。友だちも公園にいたし、遊んでいた。お昼時になるとみんないなくなり、空腹を満たすために公園の水を飲んだ。再びお昼を食べた子たちが戻ってきたのでまた遊んだ。夕方になりまたみんないなくなってしまった。季節は秋だったか冬だったか、手がカチカチに凍え、お腹も減り、とりあえずただひたすら水を飲んだ。夜の7時頃に帰ってきた母の第一声「お前も来ればよかったのに。みんなですし食ったんだよ」

母なりに「お詫び」と近所のスーパーのフードコートでハンバーガーを買ってもらった。やたら美味しくて泣きそうででも泣いたら怒られると思ったから無言で食べ続けた。

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