ぼくたちの「HIPHOP」はTVには映らない

えるヴぃしゃす

エピソード1 Life is HIPHOP(?)

エピソード1-1


3月の強い風に外の木々たちが悲鳴をあげている。長い冬がようやく終わりを告げ

春を迎えようとしている。


午前8時、ピピピッと大音量のアラームが鳴った。起きてアラームをOFFにすると

また眠りに着く。それらを5回程繰り返しようやく目を覚ました。

寝起きは真冬の寒中水泳ぐらいに最悪だ。

起きて煙草に火を付ける。寝起きの習慣だ。習慣にしてはあまりに不健康すぎるが

しょうがない。身体がニコチンを欲している。

あ、そういえば自己紹介をしないと。

俺は高史21歳、古着屋でバイトをしてるよ。いつかはラップで飯が食える様に

マイメン(仲間)と練習に明け暮れている。

MC名は  「えるヴぃしゃす」

由来はあるけどたくさんある秘密の内の一つ。いつか話すよ。

あとは1年ちょい付き合ってる大学生の彼女がいる。

自己紹介はこんなもんかな。また、何かあったら都度話す事にするよ。

とりあえずバイトの準備をしないと。10時オープンだから9時半には着いておかないといけない。電車で10分ぐらいだけど毎日の寝坊のせいで朝は忙しい。

iPodからLogicのプレイリストを探し、再生をタッチ。bluetoothで接続した部屋の

スピーカーから大音量で流れ出す。ちなみにこれも習慣だ。

HIPHOP好きな人もそうじゃない人もLogicはおすすめ。かっこいいよ。


さて、シャワーを浴びて歯磨きを済ませると着替えだ。

今日はワンサイズ大きめのhufのロンTに下はGUで買ったスキニーにこれまたGUの

ジャケット。ニューエラの帽子は深めに。

財布、キーケース、iPod、iPhone、煙草をポケットに入れた。

上記5点は365日、常にお供だ。

喋りすぎだって?しょうがない、俺はいつもクールぶってるがおしゃべりが大好きだ。玄関を出ると強風に煽られつつ早歩きで駅まで急ぐ。なんとか間に合う電車に乗れた。バイト先は降りる駅から5分ぐらい。今日も何とか間に合った。

さあ今日もオレの一日が始まる。今日だけとはいわず最後まで付き合ってね皆様。

何度も言うが俺はおしゃべりだ。覚悟するように。



エピソード1-2

さあ、午前10時になったので店のオープンだ。俺はシャッターを開けると看板類を外に出した。木曜の平日の古着屋は、さほど忙しくない。お客さんも一時間に数組来るぐらい。

平日は3名、土日は6名と店長で店を回している。今日は平日なので3名。

男は俺と古賀、女は美咲さんだ。ちなみにここだけの話美咲さんは店長と付き合っているんだよ。古賀はタメの21歳。マイメンの一人だ。DJをやっていて、イベントやライブに出るときはバックDJをしてもらってる。トラックメイク(作曲をすること)はまだまだ練習中みたい。いつか古賀が作ったトラックに俺がラップするのが俺たちの今後の楽しみだ。


バイトも暇だし今日は俺らのマイメンを紹介することにしよう。ちなみに「マイメン」と「クルー」は同意語だ。クルーは俺と古賀を入れて6名、全員を詳しく紹介するのはちょっと大変だからひとまず構成だけ。毎日の様に会ってるから詳しくは会った時に詳しく紹介するよ。みんなマジでいい奴。

まずはDJの古賀。DJ名は「DJ YU-YA」由来は古賀祐也。DJ歴は大体2年ぐらいで箱(クラブ)で回す様になったのはここ最近から。トラックメイクに必要なMPC(機材)をちょい前に買ってから必死にサンプリング(トラックを作る作法の一つ)の練習してる。

あーこれはさっき言ったね、ごめんよおしゃべり野郎で。

次はMCのフジオカ。MC名は「Flek」詳しくは会った時に。

次もMCでマサ。MC名は「Slave」こちらも会った時に詳しく。

次はMCもやっているけどMCはお遊び程度でスケートボードに夢中のソウタ。

最後にグラフィティアート(スプレー缶で壁などに絵を描く事)をやってる

ツカサ。

最後にクルー名は、「558クルー」これは深い意味はないんだ。

好きな数字並べただけ。

ざっと紹介したらこんな感じ。詳しくはその都度教えるね。

皆様がオレのおしゃべりに付き合ってくれたおかげであっという間に午後18時。

10時出勤の日は午後18時でバイト終わりなんだ。どうもありがとう。

じゃあ俺たちの溜まり場にいく事にするよ。


エピドード1-3


バイト先から溜まり場までは歩いて5分くらい。風に吹かれながら歩く。

古賀こと祐也は用事があるらしく今日は来ないみたい。

iPhoneをチェックしてみると真希からラインが来てた。内容を見ると話があるから

会えない?というちょい意味深な内容だった。真希は前にちょっと話した1年ちょい付き合っている彼女だ。気になったので電話をしてみたが、結構コールを鳴らしても

出なかったので切った。ちょっと気になるがまあいっか。

あっという間に溜まり場についたが、めずらしく誰もいない。煙草に火をつけてしばらく

リリック(歌詞)を考えながらiPhoneのメモ機能とにらめっこしてたが結局誰も来なかった。そうそう、今作ってる曲もうすぐYouTubeとニコ動にアップロードするからチェックしてね。

そういえばあえてみんなには言ってなかったが、オレ実はラップ初めて半年も経ってないいわゆるビギナー(初心者)なんだよね。。。ちょっと偉そうにMCぽく振る舞いたかったんだ。だから、エピソードが「Life is HIPHOP(?)」って感じで?がついてるわけ。

でも、ラップにかける情熱と勢いは誰にも負けないからこれからもよろしくね!

ということで今作っているのが初楽曲だから気合入ってるんだよね 。

話しを戻すけど、溜まり場には結局誰も来なかった。事前に連絡をすれば良いんだけど

なんとなく立ち寄ったら、誰かはいる感じがクルーぽいというかHIPHOPぽいんだよね。

共感してくれる人いるはず。。そのクルーぽさを今日は体験できなかったな。

もう一度真希に電話したが今回も出なかった。いよいよ気になってきたので真希の

    


編集 しおり コメント(0)

page: 3


バイト先に行こうかとも思ったけどさすがに迷惑なんでやめておいた。

さあ、どうしようか?帰ってもよかったがまだ時間も早いので先輩の店に顔を出す

ことにした。先輩はこの辺ではHIPHOP好きには割と名が知れたMCだ。僕もひそかに

憧れている。歩いてすぐなので向かっていると先輩がちょうど店を締めようとしてた。

アクセサリー屋で店長をしている先輩はいつも異常にテンションが高い。

遠くから目があうと「ワサップ!」と大きな声で叫んでいる。「ワサップ」は

HIPHOPのスラングの一つで「What`s up」を崩した物で(調子どう?)という和訳

になる。適当に返事をして近づくといきなり

先輩が「フリースタイル(即興でラップをすること)かましてよ!」とビギナーには

無理難題を突きつけてきた。「いや勘弁してください。。」と断ると「かましてくれたらいい物あげようとおもったのに」と言い放った。そこまで言われるとやるしかない!と

思い、半泣きで必死に30秒くらいフリースタイルをかました。先輩は爆笑しつつ、

二枚の券とフライヤー(ライブやイベントのチラシ)をくれた。「今度イベントするから遊びおいでよ。フリースタイルのおかげで無料だよ!」と笑ってた。

最後にお決まりの握手をすると俺は駅の方に歩き始めた。握手は一度はみなさんが

見たことがあるだろう若者特有のやつだ。文章で説明するのが非常に困難なので

やめておくよ。

夜になり少し寒くなってきた。

結局、真希からの連絡は来なかった。ラインを見ても未既読。

何だか嫌な予感を感じながら、それを振り払う様にiPodのLick-Gのプレイリスト

から曲を探し、爆音で聞きつつ家路を急いだ。

(Lick-Gは日本のMC。超かっこいいよ。未視聴の方は一度ぜひチェックを。)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぼくたちの「HIPHOP」はTVには映らない えるヴぃしゃす @eruvicious1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ