第37話 殺し屋と1人目の同業者 その4
「はぁ、はぁ」
息が切れてきた。
戦闘が始まってから5分くらい経っただろうか。
新城梨香といった目の前の敵は無尽蔵にナイフを投げてくる。
どんだけあのランドセルに入っていたんだって話だよ。
「君もタフだねー!そんなに耐える人はこれで3人目だね」
「あと2人もいんのかよ」
悪態をつきながら飛んできたナイフをギリギリで躱す。
しっかし、息つく暇もないな。
どうにかしてこの状況を打破しないとこのままではジリ貧だ。
相手の土俵でずっと戦っている時点で俺に勝ち目はない。
ナイフは360°色んな角度から飛んでくるみたい。
俺の周りをずっと走り回りながら投げているみたいで、姿はナイフを投げるその一瞬しか見えない。
つまり、投げる瞬間は止まっているということになる。
そう考えていると、あの変態は想像以上に人間離れしているようだ。
加速と減速を繰り返してこんなに耐久できるのかよ。
ナイフが左後ろから飛んでくる。
右へ身体を翻し、そのまま前に突っ込む。
自分の右でナイフを投げようと姿を見せた彼女が驚く表情を見せる。
「え」
その隙を見逃すような死神はいない。
俺は拳銃の引き金を引いて真っ直ぐ発砲する。
目の前の相手は真っ赤な花を咲かせて倒れる。
それと同時だった。
前のめりになった俺の左脇にナイフが突き刺さったのは。
「くっ!」
俺は腹を抑える。
幸いそこまで深くは刺さっていないらしい。
だが、血はなかなか止まらない。
ナイフを抜き、服を縛って止血しようと思ったが背後に殺気を感じ、とっさに臨戦態勢を取り直す。
後ろを振り向くとそこには目の前に転がっている女と同じ姿の人間が2人立っていた。
「あれー?まだ生きているんだ」
「しぶといねー死神さんは」
声も寸分違わず同じようだ。
「マジかよ…」
2人のランドセル女は続ける。
「もう分かったと思うんだけど、一応ネタバラシしようか?」
「私たちは3人で1組の殺し屋『鉄の処女』《アイアンメイデン》さ!」
ナイフを俺に向けて彼女達は笑う。
3人でローテーションして投げていたというのか。
そりゃ疲れもしないわけだ。
「その変な格好も3人で組んでるのがバレない為ってことね」
特徴的な服装なら顔の些細な変化なんて気にならないもんな。
「それじゃあ、お疲れさん『死神』さん」
「相手が悪かったね、残念でした!」
2人は揃ってナイフを投げた。
「確かに相手が悪かったな、お前らが」
「え」
「嘘」
俺はすぐさま地に伏せて避ける。
ナイフは宙を舞って俺の上を通り過ぎる。
その代わりに彼女達の心臓に弾丸が突き刺さる。
「どうして」
「なんで」
俺は土に塗れた服を払いながら言った。
「いや、ネタがバレたらどうってことないじゃん」
普通にナイフ投げてきても避ければ良いだけの話だ。
「お前らは殺し屋失格だ、手負いの標的に油断するなんてプロじゃねぇよ」
俺は3人の頭に念を入れて銃弾を打ち込んだ。
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