あとがき

あとがき~星新一賞の傾向と対策など

 さくんでくださったかたも、あとがきからんでくださったかたも、ありがとうございます。本作は西せいれき二〇一七年にしゆうされた第五回星新一賞の三次しん通過作であり、ひつきよう、最終候補作です。結果は残念ながら落選でしたが、落選作にも落選作なりに役立つこともあるかもしれませんので、カクヨム様で発表させていただくこととしました。

 本作のしつぴつけいとしては、二〇一七年の正月休みに時間があいたので、星新一賞の過去受賞作品を一通りはんどくしたうえで、四日間くらいでごうしたものです。星新一賞はしようへんSFの神様星新一の名前をかんしていますが、過去受賞作品はおしなべてハードSF色がつよかったので、個人的な愛読書であるグレッグ・イーガンの『ディアスポラ』を参考にして、おもいっきりハードなSFに仕上げてみました。前半のたらと難解である部分も、『ディアスポラ』のぼうとう、主人公ヤチマが電脳空間で誕生する、有名な〈わけわかんねえよ〉なびようしやをパロディにしたものです。

 結果は落選だったのですが、今回のグランプリ受賞作が発表まえに作者様のブログで公開されており、りゆうらんさせていただいたところ、り、さくほどではありませんが、ハードSF色のつよいものでした。で、星新一賞のけいこうと対策のはなしですが、そもそも、毎回、最終選考委員がかわるので、けいこうと対策は無意味かとおもわれます。といえども、星新一賞のとくちようとして、三次しんの委員はある程度変動せず、文学賞メッタ斬りでおなじみの大森望氏や、グレッグ・イーガンのほんやくで有名な山岸真氏などり、ハードSFがこのまれるのではないか、という人選であるかんしよくがあります。ひつきよう、まず、最終選考にのこるためには、〈なにはともあれハードSFだよ〉ということかもしれません。おうしやは実感されているとおもいますが、星新一賞に星新一のようなソフトなSF短編をおうするのはぼうです。

 一応、いままでのグランプリ受賞作を中心にかいしますと、第一回目の「「きようの谷」から「こうこつみね」へ~その政策的応用」はずばぬけたオリジナリティーとハードSF要素でいまだに異色作という立場だとおもいます。第二回「次の満月の夜には」、第三回「ローンチ・フリー」、第四回「OV元年」あたりは、短編SFの限界にちようせんするそうだいさがりよくで、なおつ、り、ハードSFの側面もわすれてはいません。受賞者の経歴からして異色の「OV元年」は、ガルシア=マルケス『百年のどく』やギュンター・グラス『わたしの一世紀』をSFにして文体実験したような野心作です。ほかに、第三回ゆうしゆうしよう「第37回日経星新一賞最終しん -あるいは、究極の小説の作り方-」あたりは、ハードSF版ボルヘス「バベルの図書館」といった具合で、くだんの第一回グランプリのけいにあたるメタフィクションであり、あきらかにグランプリ・レベルですが、ゆうしゆうしようにおちついています。から、〈とりあえずハードSFを前提として、地球規模や人類規模や宇宙規模のそうだいさで、いままでの受賞作とかぶらない短編〉くらいが、なんとか、けいこうと対策といえるかもしれません。

 とりあえず、今後、えいある星新一賞をねらうかたは、『ディアスポラ』くらいはんでおくといいのではないでしょうか。逆手をとって、〈星新一が書いたような『ディアスポラ』〉というのもおもしろいかもしれませんが。

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『らららかがくのこ~多元宇宙間戦争』第五回星新一賞最終候補作 九頭龍一鬼(くずりゅう かずき) @KUZURYU_KAZUKI

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