eコンバット 交陣 技術説明

 eコンバット 交陣 は、無線通信機器付き具足(プロテクター)をパソコンに連動させたものと、竹刀を現代の技術でより安全に進化させた模擬刀(以降、交陣刀と呼ぶ)を用いて行う新しい競技である。また、日本古来の剣術を現代の素材や技術で補うことにより、攻撃を視える化する事で安全安心を確保しながらにしてスリルを体感する事が出来る。

 ここで少し日本の武道と剣術について述べさせていただくと、先ず武道というのは明治期に柔道の父である嘉納治五郎先生が提唱したものである。端的にいうと武道とは、単なる殺しの技術であったものに、倫理観をしっかりと植え付ける武士道をセットにしたもののことで、この武士道の習得には本来太刀を用いた修練は欠かせないものだった。なぜ太刀が武士道精神育成に重要であったかといえば、刀は本来貴重なものだっただけではなく、扱い方を誤ればすぐに刃こぼれしたり刀身が曲がってしまったりする。つまり刀の取り扱い方がイコールでモノノフ(武士の古代読み)精神の表れであり、最終的な武士の価値を現してしまうものだったからである。

 勿論これらの精神を身につけるために先人は様々な工夫をこらしてきた。木刀→袋竹刀→竹刀→スポンジ刀やエアーイン刀・・・等。

 しかし其のどれもがリアルな刀のトレーニングには不足であると痛感した我々は、今一度木刀まで遡って見直すことにより、本来の刀の形状により近く、重さは竹刀より重く、プロテクター無しでも安全に修行が出来る交陣刀の開発に成功した。更に今までは熟練者しか、剣道防具越しに刃筋や物斬りが的確に対象へ当たったかどうかがわからなかった問題を、交陣専用プロテクターにIT技術を導入する事で視える化し、斬撃を与えられた側と与えた側へ『やられた感。やった感。』を伝えることに成功したものが本競技で用いる道具である。またパソコンと連動させている為、プログラム次第でいくらでも視覚的聴覚的に訴えることが出来、これは同時に観衆を楽しませる事にも一役買うことが出来る。この件に関してはフェンシング等も観衆に訴えかける為の映像工夫をしていると聞くが、フェンシングは電気判定のみで行う競技である。これは、無線通信機器をパソコンと連動させて行う交陣とは違い、技術的なハンディがあり、観衆に訴えかける工夫は超高感度カメラで捉えた映像に決まり手の軌跡を描いて再現する程度で精一杯であろう事は明確だ。一方我々はいわば無線のパソコン用コントローラーを身につけているのと同じなので、斬撃判定の位置をそれぞれ区別させる事により、多様なプログラム設定が出来る。

 なお、本競技の目的はあくまでも「自己を知る、自己を律する、自己に打ち克つ、これこそがアスリートの義務であり、最も大切なことである」 と述べた、近代オリンピックの父ピエール・ド・クーベルタン男爵のアスリート精神に則った競技が出来るかどうかである。これは同時に剣聖 宮本武蔵の武士道にも大いに通じる。

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