忘れ物

ちょっとだけ

ちょっとだけ待ってくれないか


大事な忘れ物を思い出したんだ


この道、そうこの道の先

あの駄菓子屋の横の

赤くて丸い郵便ポストを過ぎて


電信柱を三本数えた先の

山茶花の生け垣の角

ああ、そうだ、生け垣の角を曲がって


そこに僕が居るんだよ


あの日の夕方

はぐれてしまって途方に暮れて

迷子になったままの幼い僕が


両手に宝物を握りしめて

探しに来てくれるのを待っているんだ


とうの昔に忘れてしまった僕を

ずっと、ずっと…


大事な忘れ物を

迎えに行かなきゃ──…

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