今日こそはお前に勝ちたい

「今回も私が勝っちゃったね・・・」

三回目となる彼女との定期テストだったが、今回も負けだった。

「でも今回は惜しかったよ!」

「お前に慰められると余計落ち込むから・・・」

俺の幼なじみでもあるこいつとの因縁は、もう十年以上になる。

成績優秀、運動神経抜群、品行方正、眉目秀麗おまけに生徒会長、大抵のカッコイイ単語を持っている。

そんな彼女に何年も張り合ってきた俺だが、未だに勝利はない。

そんな俺を学校では、「劣化生徒会長」「生徒会長降臨の産物」「残念王子様(笑)」と散々な言われようだ。

「そうだ!たまには一緒に帰ろうよ!」

「は?お前の取り巻きに囲まれながらとか勘弁だから」

「大丈夫だよ。今日は二人がいいって言ってあるから!」

「どうして事前に報告してるんだよ・・・」

「そっ・・・それは・・・」

どうやら何か考えているらしいが、こいつの考えていることが分かれば苦労はしていない。

「分かったよ。どうせ家も隣だしな」

「うんっ!」

そういう言うと彼女は満面の笑みで答えてくれた。

(こういう所は可愛・・・気に食わないんだよな)

俺は雑念を忘れ、トボトボと教室に戻った。


(久しぶりに一緒に帰れるよ♪)

私はスキップでもするように校門へと向かおうとした。

「すみません会長、少しだけ資料作るの手伝って貰えませんか?」

「・・・うん!分かったよ」

「せっかくおやすみだったのにすみません」

「大丈夫だよ。さっさと終わらせよう」

捕まってしまった私は、資料の制作を手伝い1時間以上残ってしまった。

(さすがに帰っちゃったんだろうな・・・)

「遅いんだよ」

「・・・待っててくれたの?」

「どうせ後輩にでも捕まってたんだろうし、それに1人だと危ないからな」

「・・・小学校の頃もこんな事あったね」

「そんな昔のことなんて忘れたよ」


私は帰り道、あることを思いつき彼に提案してみた。

「そうだね・・・今日は私が遅れちゃったからチャンスをあげるよ」

「チャンス?」

「そうよ。ルールは簡単、私に負けを認めさせればあなたの勝ちよ」

「ムチャクチャなルールだな。それでも勝てるのであればやるまでだ」

「ちなみに物理的に何かするのは反則負けだから」

そう言って始まったゲームだったが、思いのほか難しいらしく彼は悩んでいた。

「何も思いつかないの?」

「・・・よし決めた」

「かかってきなさい!」

私は面白いことに耐える準備をし待ち構えた。

「・・・好きだ」

「え?」

「俺はお前のことが好きだ」

彼のとった作戦とは、まさかの告白だった。

「・・・それは本気?」

「もちろんだ。お前は?」

「・・・私の負けだよ」

「勝ったからお前の気持ちを聞きたい」

「・・・・・・私も好きだよ」

ずっと前から私のことを追いかけてきて、でも私以上に努力していた彼に私は惹かれていた。

「ずっと前から好きでした」

「それは反則だろ・・・引き分けだ」

こうして私たちの戦いに初めて彼女の勝利が刻まれなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る