第3話 1節 アトランティスの最期(2)

すると、サーヤが目を輝かせて質問した。

「銀河の二千億個の恒星こうせいは、いつから渦を巻き始めたんですか?」


先生が答える前に、ヒロが続いて問いかけた。

「宇宙には、始めから千億個の銀河があったんですか?」


楽しそうに、タカハシ先生が説明する。

「我々の宇宙が生まれる前は、時間も空間もなかった。宇宙は、百三十七億年前に極小サイズの宇宙として生まれた。そこから時間が始まり、宇宙の中にあるエネルギーによって急膨張きゅうぼうちょうした。そのとき元素のガスが生まれ、宇宙全体に満ちていた。そして、ガスの密度の高いところの密度がさらに高くなり、ガスが渦を巻いて銀河になった。我々の銀河は、宇宙誕生から二十億年たった頃、無数の恒星が渦を巻く銀河として生まれたんだ」


それを聞いて、宇宙の始まりに興味を持っているヒロが質問した。

「ビッグバンって、宇宙が生まれた時に起こったことですか」


「ヒロは、ビッグバンを知っているのか。今も宇宙は膨張しているから、時間をさかのぼれば今の広大な宇宙の始まりは極小サイズだったことになる。その極小宇宙が爆発的に膨張して広大な宇宙になったというのがビッグバン理論だから、ビッグバンという大爆発は宇宙が生まれた後に起こったと言える。だが・・・」


タカハシ先生は、ヒロの質問に気を良くして詳しく説明しようとしたが、マリやケンの表情を見てにっこり笑った。


「今日はこの辺でおしまいにしよう」

十三歳のマリやケンには複雑すぎて、よく理解できないということがわかったのだ。


遠い過去の宇宙から来たヤミの魂(たましい)が、地球上に暴力的な独裁者どくさいしゃや暴力を振るう集団を作り出していると、忍者学校の校長が教えてくれた。


ヒロとサーヤの父親、シュウジは地球の人々を守るため、ヤミのたましいに戦いをいどんだ。

影宇宙かげうちゅうの中に基地を造り、八百万(やおよろず)の神々とともにヤミやアンコクの魂と戦っているらしい。


ヤミの魂から家族を守るため、ヒロの母を仏陀ぶっだの時代に移動させ、サーヤを母の一族に預けた。さらにヒロを奈良の祖父母に預け、忍者としての修行しゅぎょうをさせたのだ。


ヒロたちは十五歳になり、忍者高校に通っている。

忍者高校は、忍者中学校の隣にある古びた校舎だが、中の設備は時代を先取りしている。


ヒロたちは、そこで物理、化学、薬学、生物学等のいろいろな知識や忍術を学んでいた。


二年前に物理の教師タカハシに教えてもらった、銀河、ブラックホール、ビッグバンという宇宙の構造も、今度は理解できた。


タカハシ先生は宇宙の起源、構造、究極の粒子を説明する超弦理論ちょうげんりろんを探求することに夢中だ。

だから、それ以外の人間的な問題で悩むことはほとんどない。


彼は、ヒロたちに重力波じゅうりょくは、影宇宙、宇宙の創世期、人の手の中の宇宙といった知識も教えたいと思っている。


「誰か、重力波って知っているかい?」

物理の授業で、タカハシ先生が生徒達を見渡した。

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