毛細血管


小説や詩の構造を人体に例えると、例えば道ゆく人などに「最も大切な箇所は何処なんだい?」などと問いかけたところで怪訝そうな顔をされ眉間に皺が寄ったところを一筋の汗が流れて光が反射した。酷暑。
そのようにわたしは今、最初に言おうとしていたことを言おうと思って文章展開をした筈なのだが脱線してしまう。
脱線。
こいつはとても厄介な出来事だと思う。
わたしが自分が最初に言わんとしていたことは「つまりね、小説や詩にとって一番、大事な箇所は心臓ではなく毛細血管のような箇所なんですよ」といったことだった。
まあ言葉にして書き連ねてみれば大した主張でもなくわざわざ訳知り顔で記述しなくて本当に良かったと今は思っている。本当だ。
このヤン氏の作品も脱線する。
しかしとても美しい曲線を描き道から外れてゆく。それゆえまるで予め計算され尽くしていたかのような心地を読者に与えるのだ。