第3章-11  お土産は炭

 昼ご飯はいい感じな定食がでた。7人でも十分に回っているようだ。


「ナル、なにかやらせたいことある」


「もしかしてやらせることがなくなったのにゃ。計画性がないのにゃ」


 グサッとくることをサラリと言われる。


「やることないなら冬に向けて、薪や炭を作らせるのはどうかにゃ」


 そうか薪って乾燥させないといけないんだっけ。


「何言ってるのにゃ。薪は1年以上乾燥させるものにゃ。来年の冬用にゃ」


 乾燥ってそんなに時間がかかるのか。大変だな。


「じゃあそれで。ナルが指揮とってね」


 姉の仕事なんも無いけどどうしよう。まぁ俺と一緒にトーゴを尋問するか。


「怪我の無いようによろしく。まぁ正直重要度は高くないから適当でいいよ」


 製錬は魔法の火だし料理も魔法で済ましてる。薪や炭は防寒用でしかない。


「ユウ様は何するにゃ」


「ランと一緒にトーゴたちに話を聞いてくる」


「じゃあこの紙を持っていくといいにゃ」


 ナルがくれたのは、元あった書類と現状の不一致箇所をまとめたものだ。さすが。





「では書類の不備はあくまでミスであるということですね」


「ふんっ、そうだ」


 俺が指摘したのはグラフルが雇ったのは20人のはずなのに、トーゴ以外にそれがいないことだ。トーゴは辞めたのを報告し忘れたと、おっしゃる。まぁ嘘だ。


「20人分の給料はどこに消えていますか」


 20人分の給料として月々金貨100枚が支給されてる。1人5枚くらいだ。高給取りだ。


「運営資金とでも混ざったのだろう」


 この鉱山は採掘物を売って運営してるのでなく、採掘物はすべてグラフルのものとなる。そして運営資金をグラフルからもらっている。公的事業なのだ。

 トーゴはその他の食費などと混ざったと言いたいようだ。


「それは無茶な言い訳ではありませんか。運営資金が2倍になっても違和感を持たれなかったと」


 運営資金が月金貨100枚。労働者は200人ちょっと、1人あたり月金貨半枚。食費以外にも衣類などもそこから出る。それでもギリギリだというのに、トーゴたち20人はその100枚で贅沢をしていたことがわかっている。クソだな。

 甘く見る気は既にない。とことん追い詰める。


「金銭面は辞めた奴がずっと管理してたんだ。仕方あるまい」


 まだ誤魔化すか。


「では、あなたが私的に優遇していた19人の班長について。他の者との待遇に差がありすぎませんか」


 トーゴが施設長で19人が班長で管理職になっていた。消えた19人の穴埋めと思われる。


「班長としての仕事がある。その分の優遇だ」


 これ、準備してあった回答だな。諦めてよ、めんどくさい。


「班長がどの程度の仕事をしていましたか。どのくらい優遇していましたか」


 もちろん19人に聞き込みをしてある。イケメンなジガンはトーゴを庇おうとしたが、他の班長は裏切ったのですべて把握している。


「そ、それは。他の人の見本になるように」


 歯切れが悪い。それはそうだ。実際のところほとんど仕事はなかったのだから。


「では、どのくらい優遇していましたか」


「食事面で少し」


「食事では班長のみ、おかずがついていたそうですね。主食も他の者の倍以上食べていたと報告がありますが」


 下を向きだした。たのしい。


「班長には労働者とは別の部屋が用意されていたようですね。娼館にも通っていたとか」


 娼館の件、実は評価している。他の鉱山では管理者が労働者に無理やり行為を及ぶこともあるらしい。体力が残っている人は襲いたくなるようだ。ここではなかったようだ。割と治安はいい方。


「あなた以外への聴取は終わっています。これ以上嘘をついたり誤魔化す様子があると給与を下げますよ」


 月に金貨5枚ももらっているのだ。半分くらいにしてやろうか。

 迅さんに教わった交渉術は、この程度の奴には通用する。それに圧倒的に優位だし。




 その後はあっさりゲロった。こいつだけでぴったり月125枚、横領していた。それもここ2年もの間。金貨でえーと、125×12×2で3000枚か。

 月125枚もらっていたってことは、労働者たちは月75枚で生活していたのか。その75枚ですら散財して、その残りで生活させられていた、と。ふざけとる。



「私たちが横領した金貨3000枚を請求はしませんが、そのお金はグラフルから盗んだものです。裁判になればどのような罪になるか想像しておいてください」


 貴族からこれだけ横領したら死刑以外にありえない。

 トーゴは下を向いているが、慌てたり顔を青くするような様子はない。覚悟してやっていたのか。


「心を入れ替えて仕事に励んでくれることを期待してます」



 書類を見る限り横領以外はちゃんと仕事をしている。班長達からの信頼もそこそこあった。経理さえ別の人にやらせればいい人材だと思う。



 あと、炭はちゃんとできてた。サクラサケに運べば喜ぶ人がいそうだ。

 木酢液?とやらも樽いっぱいに取れた。ナルは虫除けがどうのこうのと言っていた。これも今度持って帰ろう。

オリハルコンの製錬場で炭にしたと言っていたけど、炭の作り方見ておけばよかった。




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