第2章-7 コミュ障×緊張奴隷

 グラフル邸を出て馬車に乗るとやはり3姉妹は乗ろうとしなかった。今回は自分らで用意した馬車なので姉妹が乗ることに文句を言う人はいない。

 馬車に乗せてすぐに姉妹の縄を切る。


「んーと、まずは泊まってる宿にもどるね。お昼たべたらクオイツまで移動するから」

 姉とシオンちゃんは不安そうに、ロリは割と笑顔でうなずいた。迅さんも特に言うことは無いようだ。


 宿に着くと迅さんは先に帰る、と弁当を買って帰った。

 宿の食堂は沢山の客で溢れかえっていた。

 姉妹は縄を解いたとは言え服もみすぼらしく、3人も人の奴隷を引き連れていると絡まれやすい。迅さんと一緒に弁当を買えばよかった。


「ナル、適当にご飯を買ってきて」


「はいにゃー」


 護衛の人は気を使ってか欲望に従ってか人気の飯屋に行っているらしい。


 一人と言うか仲いい人がいないのはそれだけで緊張する。俺が買いに行けばよかったなぁ。


「んーと、俺は材木ユウ、ユウって読んでくれ。シオンちゃんは初めましてだね」

 シオンちゃんは姉の後ろに隠れた。


「さっきも言ったとおりご飯を食べたらクオイツまでいく、3時間くらいかな」



 ナルが帰ってくるまで約10分。会話はこれだけである。

 場を持たせられないコミュ力の無さを申し訳なく思う。



「ただいまにゃー。なんで皆突っ立ってるのにゃ」

 ナルの帰還である。助かった。


「いや、特に意味はないよ」

 ナルも俺がコミュ弱であることは知っているので(彼女が第1の被害者)それ以上は突っ込まない。


「さぁご飯の時間にゃ」

 コミュ系で困ってると率先して話の流れを作ってくれる。何度助けられたか。


「はいはい皆ベッドに適当に座ってにゃ。ほら立ってないでにゃ」

 俺とナルが座ってやっと皆座る。距離は取られてる。



 ナルは皆が座ったのを確認すると同じサンドイッチを配る。あえて同じのを5つ買ってくるあたりに平等感と言うか奴隷を大切にする感じを出す。できた子だ。


 俺やナルが食べ始めないと姉妹も食べないことはもう分かってきたのでさっさと少し食べて「ほら、食べて」と促す。

 そういえばナルも最初はこんな感じだったなぁと思い出す。




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