第2章 異世界に根付く

第2章-1 転職

「ランちゃん達を救いに行きましょう」


 美鈴さんが大きな声で俺に詰め寄る。教育も終わりしばらく美鈴さんとも話してなかった中、久しぶりに美波さんも入れての3人でディナーをしていたときだ。もちろんサクラサケの食堂で。

 因みに二人ともだいぶ酔っている。


 最近忘れがちになっていたが、あの3姉妹は明らかにひどい扱いを受けていた。

 獣人の奴隷に比べて人間の奴隷は丁寧な扱いをされるという。なにせ獣人と人間の奴隷では4~5倍の値段差がある。丁寧に扱わなければ損というものだ。


「救うって言われてもねぇ」

 相手は領主で貴族だ。そう簡単には行くまい。


「あの子、ちゃんとご飯を食べてる体じゃないわ」

 美波さんは酔っているからか目に涙を浮かべている。


「あそこの領主、いい人に見えたんだけど。なんであの姉妹はあんな扱いなんでしょうね」

 パンが美味しいといっただけでわざわざ包んでくれる人だ。


「それは君に、サクラサケに恩を売りたいからだよ」

 にしてはよく気がまわる優しさのある人だった。まぁ俺の人を見る目がないだけか。適当に頷いておく。


「ところでユウくんはもう車作ったんでしょ」

 作りましたよ、と答える。


「じゃあそれで乗り込もう」

 美鈴さんはなにも考えてないみたいだ。


「買い戻せれば穏便でいいんですけどねぇ」


 これは無理な話だ。ノルマンディ領は魔境に近いため国から多額の援助を受けている。軍事力も財力もピカイチだ。残るカードはここにある技術のみだがこれは勝手にやっていいものではない。真剣に考えてうんうん言ってると本部長が声をかけてきた。


「何に困っているんだ」


 美鈴さんが簡単に説明する。


「ふむ、近々魔物対策の新兵器を輸入する。それを交渉材料に姉妹を回収しよう」


 この本部長の言葉で3姉妹奪還計画(仮)は本格始動した。この時から俺は本部長の下で働くことになった。

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