第26話

 シュートブロックを最後に洋介の体力は尽きてしまったようで、その隙をついてサイドからえぐり洋介のマークを振り切った俺がフリーでシュートを決め1-2と点差を詰めた。

 そこからこの流れで一方的な展開となると思っていたがそうはいかなかった。洋介はボランチへとポジションを替え、中盤の底で守備に専念するようになったのだ。

 

 想定していたよりも洋介の体力がもったので時間があまりない。20分ハーフというのは長いようで短い。

 あまり悠長にしていられない。



 先程のプレーとゴールで相手の警戒がより強くなったおかげでマークをされた状態でサイドに流れるとサイドの人間まで釣ることができるようになった。

 その代償にミドルシュートは警戒されこの試合ではもう打てないかもしれない。


 まぁ元々点取り屋って柄でもないしこの先の俺自身のゴールはおまけ程度に考えておこう。


 しかしこんだけ注目されると色々とやりやすいな。誰も彼もが俺の動きに気をとられている。

 しかし仲間も俺ばかり見てるのが気がかりだ。スペースを作りにサイドに流れても俺にパスが来たりして困る。

 そこからダイレクトで中にパスが出せたときは大チャンスだが俺のマークはだいたい洋介なので簡単にはいかない。ともすれば危うくボールをロストしそうになる。この執念はなんなんだ。


 いつかの輝くんと大ちゃんの必死な形相と重なる。

 そんなになれるのに…もったいない…





 いい形は多く作れるがゴールが奪えない。

 まずいな…

 

 流れが悪い。

 

 時間もないし次の一手を考えないとこのままじゃ負けちまう。

 俺はCBに下がった中西の所へ向かった。



「なぁ、お前シュート得意か?」

「は?俺CBだぞ?」

 俺の質問に中西は怪訝な顔を見せる。

「いいからどうなんだよ?」

 時間がない。答えを急かした。

「このメンバーならお前の次くらいには上手いんじゃないか?」

 決まりだな。

「お前ボランチに上がってくれ。俺がCBに入る。」

「いやちょっと待てよ。このままじゃ…」

 俺は掌を中西の顔の前にかざし言葉を遮る。時間がないので有無は言わせない。

 細かい作戦を伝えチャンスを待つ。


 失敗すれば追加点を許して終わりだ。だけど、このまま手詰まりな状態で戦っても勝てる気がしない。

 万が一にもゴールを奪える可能性があるなら、俺は試してみたいんだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る