第6話

[8月11日 晴れ

大きな変化無し。体重の減りが気になる。久しぶりに街に買い物に行った。]



「いやぁ、人間て強いねぇ。」

紙袋をがさがさとテーブルに置きながら、僕は言った。

「お客なんて少なくなってんだろうに、ウインドウの中はしっかり夏だよ。それも競うようなハデなディスプレイばっかり。たくましいよねぇ。」

そうして、荷物の中から小さなものを取り出す。下世話に見えるほどの真っ赤な口紅。

「君は少し血の気が薄いから、あの生命力を分けてもらうといい。」

僕のカラ元気と街にあふれるむなしい鮮やかさは、君の唇の底に沈んで、丁度いい紅に落ち着いた。

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