第6話 かみさまと、おくりもの

「その髪を今度から二つに編んで、これで留めて過ごしなさい」


 いつの間にかおそろいのように腰まで伸びた人の子に、かみさまは空色のリボンを渡した。二つのリボンを受け取って、人の子は幸せそうに笑う。


「かみさまのお住まいの場所の色ですね」

「というと?」

「だって天界というのはいつでも青く晴れていて、天使さまや鳥たちが一緒に飛んで歌を歌っているのでしょう?」

「そうですね。そんな意図を持ってその色にしたわけではありませんが」


 予想が半分だけ外れたことに、人の子は言いようのない表情になる。いや、毎日神を想う自分を想っての色の選択でないという失望の方が大きいか。かみさまはそれを見て笑う。


「毎日編むのは大変ですね」

「ええ」

「ボク、髪を伸ばしておしゃれをした事がないので」


 自分で言った通り、人の子の身なりは村娘のワンピースですらなく、動きやすい、男が着るようなズボンだった。服装も、おかしな一人称も、不逞の輩から自分を守るためのものだろうか。一応は清い身のままでいられているところを見ると、ある程度の効果は見込めているようだが。まあこれからは遊び道具に手を出さないよう見張っているから、過剰に性を捨てずとも良いだろう。


「私の言うことが聞けないのですか」

「いいえ、慣れませんが頑張ります」

「よろしい」


 かみさまは満足そうに人の子の長い金髪を梳いた。


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