第13話 (俺と美咲が結婚してからの、2030年)
(俺と美咲が結婚してからの、2030年)
俺と美咲が結婚して、娘の小夏が産まれた。
カズと小池夫婦は、俺があの大地震の日に結婚式に呼んだ事により助かった。
しかし、俺がいくらあの時未来がわかっていた所で、被害者を減らすことは出来なかった。
いくら未来わかったところで、大きな運命を変えることは出来なかった。運命を先に知ってしまうという事は、とても無念な事だ。小さな未来なら変えられることはできるのかもしれないが、天災レベルの大きなことになると僕らの力だけではどうする事も出来なかった。
ただ出来る限りの事はしたくて、SNSやインターネットを通じて、避難を事前に促すような事を伝え続けるようにした。勿論、政治家でも芸能人でも何でもない僕の声は無力ですぐにありとあらゆる投稿に流されて消えてしまった。
それから、俺とカズは二人で協力し合ってポクポン教こと谷口教祖を逮捕する行動に力を注いだ。
谷口が起こしてきた数々の悪事を、警察に訴え続けたのだ。
しかし、警察は「目に見えてわかる事件じゃないと動きません」といって、目をつぶるだけだった。
酷い時は「そんな事ある訳ないじゃないか。きっと君たちは、妄想話を作り上げて僕らを脅そうとしてるんじゃないの?
あのね、僕らも遊びじゃないし勤務中だからね。あんまりつまらない事で警察を呼ぶのは辞めてくれる?」と、取り付く島もなかった。
僕が訪れた警察は、事件として表に出てから初めて動くのだと言う。しかし、それでは結局何も救えてないのでは?事件は、起こる前に動く事で初めて防げるのではないか?彼らは、本当に日本を守る気があるのかと苛立ちが収まらない気持ちで一杯になった。
この事件に関しては、FBI幹部のカズが影で動く事によってやっとなんとか捜査が開始された程だった。
そして、数々の被害者達が訴える事により、やっと警察も動くようになり、谷口は逮捕され多くのマスメディアに報道されることになった。
そして、カズや俺がアンドロイド製作に力を入れる事を辞めたことから、2030年の今でも、ずっと人間が主流の現代を守っている。
人間は、最終的に動くことを辞める世の中になり、
全員寝たきりでパソコン片手に生きて行くのではないかという極論を、俺が唱え続けた事による。
俺は、日本の伝統文化をこれからも守るために、あらゆるイベントを会議で提案していくことにした。
演歌、浴衣、祭コンテストなど。全ては、文明に人間が潰されていかない為だ。
小夏が産まれた後、数年後に息子が産まれた。俺は、年也と名前をつけた。
俺は、三谷コーポレーションの社長ではなく。
相変わらず、カズや小池と研究を続けている唯のサラリーマンだ。
それから、趣味の踊りは今でも続けている。勿論、カズや小池と一緒だ。そして、娘や息子に踊りを俺たちが教えていく・・・。
小夏は、覚えが悪いが負けず嫌いの努力家だ。
年也は、覚えが早いが動きが固い。体の固い俺に似たのかもしれない。それでも、いつも楽しそうに笑いながら取り組んでいる。
時折、カズや小池が俺の家に飲みにくる。小池は、娘の瑠奈ちゃんも連れてくる。
瑠奈ちゃんという名前なのに、カズと小夏は「小春ちゃん」と呼ぶ。
「瑠奈ちゃんて感じじゃなくて、小春ちゃんて感じだから」って、二人は言う。
俺は、その度に瑠奈ちゃんと呼べばいいのか、小春ちゃんと呼べばいいのか悩む。
瑠奈ちゃんは、瑠奈ちゃんと呼んで欲しそうだが、
娘は俺が瑠奈ちゃんと呼ぶと「違う!この子は、小春ちゃん!」と怒るのだ。ちょっと変わった俺たちだけど。平凡だけど、ずっと。平和だ。
これから先、俺がこの子達をぶつ時はこの子達の為を思って、悪いことをした時だけだ。
自分のエゴで、この子達をぶってはいけない。
俺は、「もう一つの未来」で見てきた自分を反面教師として今を生きていた。
これから先は、俺の精一杯の愛情で。
妻と。子供と。友人を。愛していきたいんだ。
守って行きたいんだ。この胸に溢れんばかりのありったけの想いを込めて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます