私、やっぱり食べられちゃう?

灰色の猫は、ゆっくりと近づいてくる。

黒くて長いひげ。

深緑色の瞳。

背中に薄い縞模様。

身をかがめるように音も立てずに、彼は来た。


「ピュルル(食べるの)?」

「ニャーゴ(どうかな)ー?」


灰色の猫はぺろりと鼻を舐めた。


「ピィィィ(私、美味しくないですよ)――!」

「ニャーゴ(それはオレ様が判断することだ)!」


彼は机の上に乗ってきた。

そして、鳥かごの間近に顔を寄せてくる。


「ニャーゴ(オマエが三代目か)……」

「ピュルル(三代目)?」

「ニャーゴ(そうさ、三代目Gill・チョッパー)」

「ピュルル(な、なんかカッコ良いわ)!」

「ニャーゴ(フハハハ、三代目は面白いやつだ! オレ様はハリー、この家の飼い猫さ)」

「ピュルル(よろしくねハリー)!」


先代ギルチョッパーは体の大きなタカだった。

ジミーは先代にエサをやるのが大好きだったの。

でも、病気で死んでしまった。


ハリーは鼻をぺろりと舐めた。


「ピュルル(初代はどんな鳥だったのかしら)?」

「ニャーゴ(さてね。それはわしには分らないさ)」


ハリーはまた鼻をぺろりと舐めた。


先代ギルチョッパーは病気で死んだのよね?

灰色の猫に襲われた……ってことはないのよね?


少し不安になったけれど。


「ニャーゴ(オマエ、小さいな。この扉から出られるんじゃないのか)?」

「ピッ(えっ)!?」


ハリーは爪でロックを外し、鳥かごの小さな扉を開けた。

そして、顔をぐいっと押し込んできた。

入り口に耳が引っかかって、ねずみのような顔になっている。

元々釣り目気味なのに、ますます釣り目になっていて怖い。

彼は鼻をひくひくさせて、私のにおいを嗅いでいる。


「ピキィィ(食べるの)――!?」


私は鳥かごの奥に身を引いて叫ぶ。

ハリーは鼻をぺろりと舐めて、


「ニャーゴ(食べないさ。ジミーがまた悲しむから)……」


鳥かごから顔を引っ込めて、背中を向けた。

小さな扉は開いている。


「ニャーゴ(来いよ、この家を案内してやる)!」


ハリーは振り向き、鼻をぺろりと舐めた。

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