第6話 日常コメディ展開からシリアスへの急降下。

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 つい先日、初めて感想返しという機能を知りました。かなり遅れてしまいましたが、ぼちぼち感想返しをやっていきたいと思います。

 ただ、感想返しどころか感想がどのように届くかさえ知らなかったんだから仕方ないよね(笑)と、寛大なお心で受け止めて頂ければ幸いです。


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「えぇと、お兄さん……?」


 恭しく三つ指を付き、裸ワイシャツを着るには少々危険が危ないたわわな果実を揺らしながら、無駄な新妻感を出す二葉ーーと瓜二つの少女。

 ポムポム汁に塗れて分からなかったが、こうして面をつき合わせてみると、見れば見るだけ瓜二つだ。

 粒子纏う銀髪に、琥珀のような透き通った瞳。あどけない中にも大人としての部分が見え隠れし、しかし第一印象は“可愛らしい”に尽きる。細くしなやかな筋肉が程よくついた手足は雪のように白く、全体的に小柄な為に衝動的に護ってあげたくなるオーラ的なものをズモモォ……みたいな感じで放出している。

 ーーだが、胸だ。

 見比べてみる。

 一言で表すなら……ペターン。ボイーン!かな?

 片方はシャツの襟首から慎ましい双丘がチラチラと見えるが、もう片方は見えないどころかワイシャツが圧迫ーーいや圧死直前だ。出来れば来世はワイシャツに生まれ変わりたいーーではなく、薄っすらと見えるピンク色のボッチが非常に眼福ーーでもなく、もし二人が一卵性の双子だとするならば、間違いなく遺伝子に突然変異か何か異常があっ「兄さん?」


「(╬^∀^)」

「ʅ( ´_ゝ`)ʃ」



 バキドガグシャッベキッグバドバゴチャバキャベキュグチュベチャドボッグラッシャアアアアァァァァアアアッッッ!!!




ひいはん兄さん?」

『はい。兄さんーーーーと言えば二葉様が「妹萌え属性のある兄さんは鼻血ぶしゃーで悩殺されるー(棒)」と……』


 テヘッ☆って感じで舌を出し、頭をコッツンコする少女。腕が動くたびにスイカ以下メロン以上がブルンブルン揺れて大変眼福なのだが、その行為と表情が似合わな過ぎている為に非常に不気味だ。

 もっと言えば……無表情なのだ。まるで感情を何処かに忘れて来たみたいに。

 ーーでもまあ、それはひとまず置いておいて、


「二葉後でちょっとお話な?」

「事実でしょ兄さん!」


 事実無根である。


「で、このテレパシーみたいなのが君の能力ギフト……なのか?」

『《ギフト》とは?』

「え?」

「兄さん、この子は記憶喪失らしいのです」

「は?」


 記憶喪失?ーーんなベタな。

 じゃあ、感情が抜け落ちているのもそれが原因だと?


『少々の単語とこの能力の使い方……それと、私と瓜二つの人物を探し出してコンタクトを取れというなかば強制じみた命令しか覚えていません……』

「よっし出て行け」

「兄さん!?……正気なの?」


 今、なんと言った?

 何だそのどう考えても危険臭しかしない命令ってのは。

 別に、何もなければ一週間でも一ヶ月でも気の済むまで、記憶が戻るまで好きに居候という身分に甘んじてくれても構わないーーそう、思っていたが……

 これはダメだ。確かな言葉には出来ないけれど、これはダメな気がする。


「当たり前だ。お前を危険に晒すくらいなら鬼にでも悪魔にでもなってやる」

「本当にいいの?こんな私に似て可愛い子を外に出したら一瞬で狼どもに捕まって滅茶苦茶だよ?私に似た可愛い顔が無茶苦茶にされるのを兄さん、耐えられるの?私は……こんな可愛い子が破茶滅茶にされるのを……黙って、見ていられない……」

「ちょいちょい自分持ち上げるのやめようか」


 あいも変わらずの二葉の調子につい、惑わされてしまう。

 例え自らに危険が迫っていようと、他人を平気で助けられるーーこの子は、そういう子なのだ。

 涙が出るくらい優しくて、心臓が圧迫される程心強い。

 不満も不平も持ち合わせていなく、ただ人の隣に立つ。

 だからつい、警戒してしまう。


「だと言っても……なぁ、結局君の異能ギフトってなんなんだ?」

『私の異能ギフトは《幻覚・・》だと、記憶しています』

「……幻覚?」

『はい。幻覚です。テレビや漫画でよくある脳に直接、強制的に・・・・イメージを見せつけるもの……と言った理解で大丈夫です』

「妙に単語を知ってるな?」

『二葉様に「兄さんはその程度の説明でだいじょび〜(棒)」と伺っています』

「お前ちょっと後でキッチン裏来いまじで」

「え!?ついにその気にっ!」


 ……え、もしかして今までの一連の流れって《素》だったの?

 テレビを見ながらポテチ片手に手を振っている二葉が幻視できた…………あっ?


「ーーちょっと待て。詳しい説明が出来るって事は……受けたのか!?能力を!」

「うん」

「お、まえ……」

『問題ありません。危害などは加えていませんので』

「当たり前だ!ーーだ、大丈夫なのか二葉?」

「兄さんあんなことやこんな事を……ハァハァ」

「安心したよ畜生」


 しかし、これは二葉のプレゼンだ。

 以前子犬を拾ってきた時に同じ様な事があった覚えがある。

 二葉は他人の長所を的確に適切に見抜きそれをアピールできる特技とも言うべき才能を持っている。

 本来であれば、それは大変な美点であり美徳なのだが……いかんせん使い道と使い所が間違えている。誤っている。

 別に、貶す気も貶める気も無論、さらさらないが、だからと言って、全てが全て「うん」と言える筈もない。


「兄さんもいい夢見せてもらいなよ」


 ーー言ってたまるか。


「き、巨乳に……はざ、まれぇる……夢も、見れ……るよ……うええぇぇぇ」


 ーー言って……たま……るか。


「ぐすっ……ひっく、二葉が……爆乳に……なっ……うぅ……夢も、見れるよ……」


 ーー何故そうまでしてプレゼンする?


「で、何故普通に喋らない?頑なに能力を使う理由は?」

『それが……』

「兄さん、多分その娘宇宙人か異世界人だよ」

「なんだ突然……」


 泣き止んだ二葉が、突拍子も無い事を言う。一体何処にそんな根拠が……


「だって、聞いた事ない言語だったから・・・・・・・

「!?」

『……そんな、距離を取らなくても大丈夫ですよ?』

「ーーはっ。こっちの都合だよ、都合」


 背後に隠す、二葉から動揺の気配が伝わってくる。ーーだが今は、そちらに拘ってもいられない。

 念の為、瞬時に召喚できるよう頭の中でカタログを開いておく。この際、金に糸目も付けていられない。


「……その異世界人か宇宙人かは知らないけど……頭の中とは言え、どうしてこれだけの言葉を……………二葉さん?」

「テレビ見せた」

「情報収集の機会っ!」

「後ネットも」

『まじ○』


 卍の次に流行った言葉だ。まじまるじ


「ーーお前の目的は?」

『先に話した通り、私と瓜二つの人物ーー二葉様とコンタクトを取る事です。それ以外はなにも……』

「本当にそうなんだな?」

『ハイ』

「もし少しでも怪しい動きをしたら……」

『分かっています、出て行きます』


 腰を折り、首を差し出す。

 重力に従い、粒子を伴う銀髪がサラサラと溢れ白いうなじが露わになる。

 ーー正直、これが何なのかは分からないが、彼女流の降伏ーーひいては契約の証ーーなのだろうか?

 よく、分からない。


なら良い・・・・

「……え、ああっ!さっすが兄さん!話が分かってる!」

『ありがとうございます』

「さ、二葉。晩御飯にしよう。君はーー君、名前は?」

三月みつきです、兄さん」

「三月?」

『はい、二人で決めました』

「いいの?それで」

『異論どころか感激の極みです』

「君ーー三月ってちょいちょい日本語おかしいよね」

『それほどでもです』

「褒めてないよ」


 あははははと皆んなして笑い、不自然な程・・・・・、いつものように晩御飯の支度に取り掛かり、時間も飛んで一時間後ーーーー



「ああ、三月ーちょっとこっち来て手伝ってくれ」

「えちょっ、兄さん、私は!?」

「今日も待機だー」


 もうっ!なんて頰を膨らます二葉に、軽く笑い掛ける。

 今日はシチューだ。モンスター食材の一切入っていない、いっそこの街においては冒涜的なまでのシチューシチューしたシチュー。

 クリーミーな匂いが台所いっぱいに広がり、ご機嫌斜めだった二葉も、ついつい鼻をヒクヒクさせている。

 うん、可愛い。


『微笑ましい……と言うのですか?』

「そうだな。こう言う日常が続いて欲しいと切に思うよ」

『えと、ご用事とは?』

「ああ、大した事じゃないんだ【ポムポム】」


 パタパタと、わざわざエプロンまでして来た新たな居候ーー三月に、二葉から見えない角度で陣を構成し、ポムポムを召喚した。


『…………』

「驚かないんだな」

『スライムですよね?モンスター中最弱の』

「そうだな。世にも珍しい緑色のスライムだ。名は【ポムポム】」

『キュー』


 そしてその上に粘土質で、ポムポムは楕円を象っているがスライムは形を持っていない。

 まさしく、玩具のスライムのような、本来モンスターとしてあるべきスライムという風なのだ。

 それに対し、ポムポムは声を出せる。以前言葉は分からないが、これが一番の違いだろう。黒曜石を思わせる瞳は一致している部分かな。


『………』

「でな?言い忘れていた事だよ」

『はい』

「少しでも怪しい動きーーなんて生緩い。少しでも二葉に危害、またはそれに準ずる事をしてみろ……」

『出て行きますよ?』

「殺す」

『ですか』

「圧殺し絞殺し撲殺し刺殺し殴殺し黙殺し毒殺し暗殺し活殺し滅殺し虐殺し撃殺し惨殺し爆殺し抹殺する。絶対だ」

『はあ……』


 その言葉に対し、三月はこう言う。


『狂気的ですね』

「妹を守るのが兄だ」


 知ってるか?上に上げた事は全て、ポムポムはやれるんだ。

 不自然なまでに二葉は三月コイツを受け入れた。それがコイツの言う通り、本当に幻覚によるものか或いは洗脳系の能力ギフトなのか、人相が瓜二つだからなのかは今の所分からないが……


『こう言うのをなんて言うんでしたっけ……えと、遊具のような……』

「それはブラコンだよ。これはな、シスコンって言うんだ」


 例え鬼になろうと悪魔に堕ちようと、二葉だけは、必ず守る。


「………覚えとけ、異世界人・・・・


 もう、絶対にあんな目には合わせ・・・・・・・・・ない・・

 二葉の異能ギフトは、間違いなく世界に一つしかないものーー【異能の強制発動】なのだから。

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Re:Start〜兄ちゃんな、悪の総督やってるんだが部下とコミュニケーション……取れてないんだ。〜 ネコモドキ @nekomodoki

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