9.シンプルさと遊び心と

この週末、気分転換がてら幾つか作品をまた巡っていたのですが、作品のタグに


文体診断:〇〇


と付けられているのを何度か見ました。

なんじゃそら、と調べてみると、今はこういう面白いものがあるんですね。


「文体診断λόγωνロゴーン

http://logoon.org/


文章を入れると、どの文豪大先生に近いか診断してくれるそうです。

試しに拙作『人間判定』や今作っている試作品を突っ込んでみると、

・太宰治

・阿刀田高

・小林多喜二

・松たか子

あたりの名前がよく出てきます。


危ないですね。僕みたいな素人がやってしまうと「平成の太宰治だって、えへへ、へへへへ」みたいな人間失格級の勘違いをしてしまいかねません。ダメダメ、戒め。

勝手ながら他の作者様の文も突っ込んでみて、同じような結果のものは確かに初見で入りやすいなー、とか、あーこの人の文は確かにー、とか楽しんでいました。


また、このツールには「文章の読みやすさ」を始めとした4つの評価項目もあります。この読みやすさは「一文が短いほど評価が高くなっています」とルールに書いてあります。


この点は、ここカクヨムで展開されている多くのエッセイの論調と同じです。個人的にも異論ありません。一文は短いほど読みやすい。


……ただ、全部短けりゃいいのかというと、必ずしもそうじゃないのかな、とも思うようにもなりました。


例えば、別に回し者でもなんでもないのですが、今、この作品がツボです。メルヘンな甘さが漂う中で、慈悲も容赦もご都合主義もなく凶悪をさらりと差し込んでくるのがたまらないです。


『ムルムクス』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885270743


一目でわかりました。これは素人が真似しようとしたら怪我する文章だ、と。さすがはプロというべきか、遊び心が文章にふんだんに盛り込まれています。

例えば以下の文。


<引用開始――――

 人ひとりが死ぬことなんて、たぶんそんなに珍しいことじゃない。


 階段から足を滑らせて頭を打っても死ぬし、プールで足が攣っても溺れ死ぬだろうし、風邪も甘く見ればこじらせて死ぬかもしれない。歩道を歩いていたらブレーキの壊れたトラックが突っ込んでくるかもしれないし、武装したテロリストが突然学校に襲撃してくるなんてこともあるかもしれないし、頭のおかしい通り魔がいきなり切りつけてきて拉致されて暴行された挙句に山に捨てられるなんてこともないではないのかもしれない。

――――ここまで>


最後の文とか冗長とも言えるくらいの長さです。敢えて最後「ないではないのかもしれない」で終わるあたり、意図して長くしているのが見て取れます。この文のある話を切り取ってをロゴーン先生に突っ込んでみたら、読みやすさは余裕のE判定でした。


……ですが、これ、読みにくいでしょうか。僕は読みやすかったです。

おそらく、1つは言葉自体は平易なものが多く、平仮名の割合も多いこと。もう1つは同じような内容、構成を繰り返しているので読者も続く言葉を予想しやすい、ってことでしょうね。


繰り返しも1つのテクニックです。繰り返すことで内容が強調されて印象に残るからです。この長い部分が、作品の大事な要素、コンセプトを読者に確実に知らしめるためのタワーのようにそびえ立つわけです。


流石に全部あの長さで文を繰り返されると読者も作者も疲れるでしょう。基本は短く。ただ、ここぞというところでは遊び心を持って長くしても面白いのかな、と思いました。……ま、僕はまだ素人なので、そんな欲に溺れないように気を付けなきゃいけないですけどね。でも、ここは長くすべきだなって思うことがあればトライしてみてもいいんだっていう考えは、どこかに持っておこうと思います。


さ、まだまだ創作頑張ります。


ではまた。

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