第2話透視

番組は午後7時から始まる。


「そろそろスタンバイお願いします!」

「あ、はい」


エリカ様は楽屋を出ると、そのまま生放送が行われる部屋へと向かった。何台ものカメラと観客に見守られてエリカ様は椅子へと座った。


「あれがエリカ様だ」

「アーメン!」


そんな声が、周囲から漏れる。

霊能力者と聞いて、彼女を知らない者はいないだろう。それほど彼女の事は知っている。そして番組が始まった!!


「未解決事件生放送3時間スペシャル」と題して、番組の司会者であるスーツ姿の男が語り出す。そのままVTRへと移行した!!


「由香ちゃん、本物の霊能力者だよ!!」


僕が興奮気味に告げた時、彼女は鼻を鳴らした。


「霊能力者などいるわけないだろう!」


あれほど行きたがっていた彼女なのに、番組が始まった途端、あの興奮した様子は影に潜まていた。観客席には僕を含め、数十人の観客がいる。


「エリカ様!!」


と、黄色い歓声が沸きがるほどだ。


そろそろVTRが終わります!!と誰かが言った。


「どうでしょうか?エリカ様」

「何とも言えませんね。少年が消えたのは平日の昼間。しかも防犯カメラが複数あるデパートから消えている。それも5分足らずで」


エリカは真剣に透視を行う様子だった。


「では、元警部に展開を聞きたいと思います!」


元警部と名乗る中年の男へとマイクが差し出されると、元警部は持論を告げた。


「これは少年を狙った誘拐事件、あるいは無差別に子どもを狙った誘拐事件と思います。多くの客がいる中で少年を狙うことは通常、ありえません」

「どうしてでしょうか?」

「別にデパートではなくても犯行が可能だからです。私なら、下校中、あるいは登校中に狙うと思います。まさか多くの人がいる中で……リスクが大きすぎる」


元警部は顔をしかめた。

それには同感だ。多くの人がいる中で犯行に及ぶ必要はない。


「つまり、無差別に狙ったと」

「そうですね……」


元警部が言うと、エリカ様へと視線を巡らせた。

彼女は頭を抱えながら、唸っている。


「どうしました?」


慌てて司会者がマイクを向けた。


「ち、違います。

犯人は最初から少年を狙っていたのです」

「は?バカバカしい」


元警部は侮蔑した瞳で告げた。


「犯人は少年の家族に相当、恨みを持っていました

だから、少年を狙ったのです!!」


エリカ様が言うと説得力があった。

そして、同時に周囲から黄色い歓声が響き渡る。


「では、事件の詳細について語りましょうか」

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