ナンパ

白川津 中々

 とにかく女を抱きたくて仕方がなかった俺は街へナンパに繰り出した。

 光るネオンが心くすぐる。赤提灯が喉を乾かす。が、本日は酒ではない。おんな。オンナ。女だ! 俺はとにかく女を抱きたい! 女を抱きたいのだ! 

 いや、抑えろ。収まれ。剥き出しの情欲は女にとってのイワシの頭。猛りに猛った下半身はひとまずstay。ここは自然に爽やか丁重に。獲物はじっくり確実に。さぁいざ落とそう淫パール! オペレーション、チン挿すマンだ!


 おっと眼前に金髪美女の後ろ姿をロックオン。背丈の高さから見るにあれは洋物。よかろうよかろうたまにはよかろう。黒船撃チン大作戦。今こそここで大結構! さぁさぁ行くぞ今行くぞ! 目指せパツキンニューヨーク! 


「ハロー! ユーアグッドガール! レッツセックスアーユーオケー!?」


 外人相手に小手先不要。リビドー隠さず素直に囁くアイラブユーだ。名前は知らんがパツキンよ。時差ボケかます暇ないぞ。今夜はオールナイトの日米戦争。神風吹かすぞいざ決戦! と、息巻いている俺に、不思議な現象が起きたのだった。


「あら可愛らしい。大丈夫よ。ワタシ、日本は長いから……」


 その声は確かに女から出ていた。しかし、それはあまりに野太く、猛々しく、そして、漢らしかった……


「今夜は、寝かせないわよぉ……!」


 振り向いたそいつは異様であった。テカリのある、脂ぎった顔は勇ましく、黒々とした髭は威風があり、そして、太く、逞しい首には大きな喉仏が隆起していたのだった。

 これは何かの間違いか? いや、現実だ。此れ程の重圧を、夢や幻で感じるはずがない。 クソ! ボディラインが丸分かりのカクテルドレスがとんでもない力を発揮していやがる! コートで隠れていたとはいえこの体格は異常だ! 何故俺はこんな筋肉達磨をナンパしてしまったのだ!


「さぁさぁ! 行きましょ! 二人の天国ホテルへ!」


「いや! まて、話せばわかる! 止めて! 止めましょう! お願いだからぁー!」


 懇願は無視され近場の地獄ホテル拉致チェックイン。そこで俺は、四つでP320を突きつける凄まじい姿の金髪肉達磨のASSに突貫する事と相成った。


「どうだ! 俺のエンジェルリングは! 女房よりいいだろう!」


 うるさい馬鹿口を閉じろ! だいたい言葉遣いが男になっているじゃないか!

 俺は頭の中で悪態をつきながら、間抜けに肉達磨を突きまくっていた。肉達磨の言う通り具合はかなり良かったのだが、やはり男色は好かない。次からは、ちゃんと顔を見て選ぼうと心に誓った。


 そうして汗だくでハンドガンを向ける外人に対し、僕は一抹の愛もなく、排尿と同じ感覚で白濁を吐き出し、そのままシャワーを浴びてホテルを後にした。夜はまだ浅かったので、酒を引っ掛けて帰った。しこたま飲んだビールの味は、すべて、涙の味しかしなかった。

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