1/27

 秀介は隣の病室で塔とは同い年だった。秀介も何の病気で入院しているのかは知らなかった。

「ちょっといいか」

「あぁ、大丈夫だよ」

「ラウンジに行こう」

 二人はラウンジに向かった。もうすぐ受付も終わる時間なので院内にはそれほど人は多くはない。二人は終始無言だった。お互いに共通の話題がないわけではないが、特段話すことはないといった感じである。それが二人の距離感であった。

 ラウンジに着くと二人はアイスティーを注文した。そして、端っこの席に着いた。

 その時も二人のどちらかがリードしたわけではなく、暗黙の了解で決めたのだった。

 二人はアイスティーを一口飲むと見つめあって、間を図った。

「どうしたんだ?」

 秀介が尋ねる。

「話があるんだろ?」

 秀介は満面の笑みを浮かべた。

「ここから脱出しないか?」

 塔は予想だにしない言葉を聞いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る