荒木 将一の日記 その2


 今俺は保健室で横になっている。


 疲労困憊ながらも俺は再びスマフォに日記を打ち込んでいた。


 まだ一日も経過していないのに凄く濃密な出来事があった。


 そして生き延びる事が出来た。



 しかし今は助かった事よりも今、頭の中で南 静香の事を考えていた。



 この学園は設備を維持する為に幅広い生徒を良くも悪くも受け入れていた。


 その中にはこの気に乗じて悪行を働こうとする極悪人までも含まれている。


 それに人間の良し悪しと勉強の良し悪しは別物だ。


 良く耳にした言葉で勉強の出来ない人間の為の慰めの言葉程度の認識であったがあながち間違いでもないらしい。


 南 静香の名前を聞いてそう言えばと噂になった事がある。


 何でも暴行を受けて中絶した女子生徒がいるとか。


 あまり表に出なかったのはここがミーミルの施設でもある比良坂学園だったからだろう。


 この事件の真相は未だ掴んでないがミーミルは何かしらの形で関与しているのは違いない。


 そして彼達からすればガキどもの下らない悪戯や禄に躾も出来ない無能な教師どものせいで国家権力の介入を許して窮地に立たされる訳にもいかず、彼達の権力を持ってしてこの件を封印したと考えるのが筋だろう。


 反吐が出る話だが学校と言う環境は治外法権がまかり通る独立都市的な部分がある。


 普通の学区ですらイジメを犯罪として扱わず揉み消しているのだ。ミーミルクラスの多国籍企業がバックに付いている比良坂学園程度なら造作も無い筈だ。


 さて、これからの事だが正直問題が次から次へと出て来ている。


 何とか合流出来た二人から聞いた話によれば未だにこの状況を認識できているのかどうか怪しい生存者が少なくないらしい。


 早い話、委員長の様に突拍子もない行動に出る奴や木下の様にサイコパス化する可能性があると言う事だ。


 ほんと気が重たくなる。



 それにしてもあのトカゲの化け物――あんなのが一体だけだとは到底思えない。


 今こうして保健室で横になってるが正直落ち着けない。


 それにまだ木下の奴も健在で不良クズレの武装勢力もいる。



 今にして思えばこの両者を産み出したのは自分の責任だろう。


 ならば自分の手でケリを付けなければならない。


 瞬も真田先生も、誰も彼もが命賭けで生きている。


 だから自分だけが知らぬ存ぜずと言うのは通用しないだろう。



 だが流石に今日は疲れた。


 もう何も起きなければいいのだが…… 



*荒木 将一の日記から抜粋  

    

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