45話 よって

 ・・・・・・そして、世界はリセットされた。


 己を救おうとした吹雪の手によって、この世界はあるバイアスのもとに再編される。


 過去へとトリップしていた思考は現実に引き戻され、帝はセンセイの後ろ頭を見つめた。


「これが、事の顛末ですよ。・・・・・・まあ、どうしてこの二つの世界が生まれてしまったのかまでは知りませんがね」

「・・・・・・そんな関係もあったんだな。あっちの私はお前をそう、見ていたのか」

「自分で言っておきながら、照れくさいですがね。俺も今まで知りもしませんでしたから」


 心なしか、その背中は縮こまっているように思えた。あくまで記憶、それも並行世界の人物となればその内情まで推し量ることは出来ない。


「ですが、疑問も残ります。吹雪の、俺にとっての元の世界の吹雪の《回帰》の力によって、あいつの望んだ世界に造り替えられたんだとしたら、吹雪がいる前提のこの世界のセンセイや他の皆は記憶を元の世界と共有していないのか。元いた世界が吹雪のいないという仮定の下にリセットされたなら、どうして俺が記憶を取り戻すことが出来たのか、記憶を取り戻すのか。そもそも、俺が記憶を取り戻す条件が何だったのかも、分かっていない」

「・・・・・・なんとなく、わかる気がするよ」

「分かるんですか! 教えてください!」

「なんとなくと言っただろ! それにあんまり強く抱きしめるな!! ・・・・・・その、腕が胸に・・・・・・」


 あまりに薄くて気づきませんでした。なんてことは口が裂けても言えない帝は大人しくスライドして少し下に手を当てる。


 なんとなく、その感覚はよく分かる。言語化不能の様々な関連性や憶測によって成り立つ理論。言葉で説明できないが、恐らく正解に近いものを持てるそれは、誰しも経験があるはずだ。


「・・・・・・そう、ですか」


「それについては、このリリムちゃんがお教えしちゃうよお!」

「うわっ!? どこから現れた!?」

「おわっとぉ!? リリム・・・・・・お前、消えたんじゃ!!」

 

 横転しかけたバイクを何とか持ち直す。

 何の脈絡もなく、その少女は虚空の中から姿を現した。あの時と同じ、ただ違うのは空を飛んでバイクと並走していることと、見たことの無い制服を来ていることくらいか。


「うーん、前はリリムの妖精の力を使って勝手に来ちゃっただけから仕方ないんだよね~ってのは今はどうでもいいでしょ!? パンドラについてだよね! リリムわざわざそのためにここまでまた来たんだから!」


 結構どうでもよくない情報があった気がするが、それについて言及するのは控えた。もうすぐパンドラの元にたどり着く。それまでに話を終えたい。


「話してくれ」

「アイアイサー! えと、どうして元の世界とこの世界が色々と違う感じで存在してるか、だよね。それはつまり、吹雪ちゃんがキミのことが大好きだからに決まっているのです!!」

「・・・・・・・・・・・・は?」


 謎解きは予想外の方向から。

 語られるそれは、この世界の真相。 

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