エピローグ


 かくして平穏な日常が再開した。

 基本的には、以前と変わらぬ毎日だ。


 もちろん変化もある。

 例えばシャーロット。


 この金髪娘は、俺のアパートで暮らすことになった。

 晴れてひとつ屋根の下だ。


 アメリカ在住の亀吉とは、ビデオチャットで二〇年ぶりに対面を果たした。


 シャーロットの処遇について、亀吉と交渉した結果、当面の間は、この金髪娘は俺の元にいられることになった。


 例のステマ動画を、取引の材料に使ったのである。

 相手の弱みを握ることが交渉を成功に導く秘訣だと、再確認した次第である。


 俺はといえば、ライトノベルの執筆に取り組み始めた。

 真っ白な大雪原との闘いだ。

 原稿が完成したら、新人賞に応募する予定である。


 そんなある日、俺のモチベーションを刺激する出来事が起きた。


 SNS仲間の機長氏と会話をしている時だった。

 ちなみに機長氏の正体は萌々である。

 萌々はまだ、機長氏の正体が俺にバレたことに気づいていない。


@qtkityo『ヲーウィ、ラノベの原稿書いているかぁw』


@kotaroo『鋭意執筆中だ。傑作が仕上がる予感がするぜ』


@qtkityo『実はなコタロー氏。ヲレの知り合いもラノベの新人賞に応募するんだとよw』


 機長氏の知り合い?

 ということは、ひょっとして──


@kotaroo『その知り合いって、何歳だ?』


@qtkityo『四〇歳だw』


 やっぱり文子じゃねーか!

 文子め、俺に勝負を挑むつもりか?


 後日、文子に会った時に尋ねてみると、

「前からラノベを書いてみたかったのよね」


「俺に影響されたのか?」


「うん。光栄に思って」

 と文子は素直に宣った。


「で、原稿はどれくらい書いたんだ?」


「半分ぐらいかな。あと一週間もあれば完成しそう」


 も、もう半分だと?

 俺なんかまだ3%も進んでないぞ。


「どんな猛スピードで書いてるんだよ」


「一日一万文字くらいかな?」

 と現役エッセイストは涼しい顔で言う。

 だが、その眼差しは真剣そのものだ。


(ま、負けられねぇ)

 俺が奮い立ったのは言うまでもない。


 俺も文子も今年で四〇歳。

 思えば長い長い紆余曲折があった。


 だが二人は今、同じスタートラインに立っている。

 なんという運命の巡り合わせだろう。


 そして俺たちはいよいよ走り出すのだ。

 輝かしい未来へ向かって──


 さあ。

 俺たちの戦いは、これからだ!

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おっさんと美少女たちのオタ充な日常 ミカン星人 @mikanseijin

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