第6話 僕とクラスメイト達

 雨が降り始める六月半ば。いつもの様に教室でゲームを

している柊介に誰かが話しかけてきた。


「よう浅倉」

「!えっと」

「俺、進藤慎一(しんどうしんいち)同じクラスだぜ!」

「ご、ごめん。覚えてなくて」

「まぁお前、まだこのクラスの奴らと話した事

なさそうだしな」

「う、うん」

「あんなに美少女な女の子とは話すのにな」

「そ、それは」

「同じ趣味かなんかって事だろ。よくそのゲーム

してるもんな」

「そ、そうだね。同じ趣味だから話しやすいって

いうのはあるかも」

「まぁ友達ってのはだいたいそうだからな。だから

俺もお前と話そうと思っててな」

「?し、進藤君もゲームやるの?」

「ああ。それなりにな。まぁもちろんそれだけじゃないが

実は今ハマってるゲームがあってよ。でも、中々

進めなくてな。それで、ゲームに詳しそうなお前に

手伝ってもらおうかと思ってな」

「そ、そうなんだ。それでどんなゲームなの?」

「ああ、これなんだけどよ」

「あ、これね。もちろん僕もやってるよ」

「本当か?じゃぁ一緒に進めようぜ」

「うん。じゃぁ準備するね」


 進藤がやっていたのはスマホ用のアプリゲームで

今話題の奴だった。

 柊介は以外だと思った。普段進藤は誰とでも

話していて、クラスの中心な存在だからゲームとかは

しないと思っていたからだ。容姿もそれなりに

カッコいいのもあって。

 そんな進藤に話しかけられて、柊介は少し

うれしかった。本当は同じ男子と仲良くなって

ゲームがしたいと思ってたからだ。


 休み時間の間は進藤と一緒にゲームを進めた。昼休みも

二人で食堂に行き、食べながらゲームをする。

 

「それにしてもお前、けっこう話せるじゃん。それなら

他の奴らにも話しかければいいのに」

「そ、それはちょっと。僕から話しかけるなんて

事はまだしたことないし、それにゲームとか趣味以外で

話すのは」

「まぁそうだな。でも、同じクラスなんだからよ。せっかく

身近なんだから仲良くして楽しまないとな」

「ごめん。僕にはできないかも。それができたら中学の

時は」

「中学?そういえばお前どこの中学なんだ」

「それは、あまり言いたくないかな。ごめん」

「まぁ言いずらそうだからあまり聞かないが、何か

困ってるなら話せよ。俺はお前の味方だぜ」

「ありがとう進藤くん」

「おう」


 二人は教室に戻り、続きをした。それから放課後

先生から二週間後にオリエンテーションが行われる

事を聞かされ、クラスで何をやるかが話しあわれた。

 当然、柊介は自分には関係ないと思っていた。どうせ

何も与えられないと思ったからだ。

 でも、それは違った。なぜなら、その進行役を

していたのは進藤だったからだ。その進藤からいきなり

何をしたいかを柊介に聞いたからだ。


「浅倉!お前何がやりたい?」

「え?ぼ、僕!?僕はその」

「おいおい、いきなりそいつに聞くのかよ」

「何も答えられないんじゃない?」


 クラスの連中はたいはんは柊介を良い風には

思っていなかった。

 でも、進藤は違った。

「おい、同じクラスメイトだろ。あまり否定的な

事を言うなよ。それで、どうだ浅倉。普通だと

演劇とかが定番なんだが」

「えっと、そのげ、ゲームとか?」

「ゲームか。面白そうだな」

「本気か?ゲーム機なんて用いできないぜ」

「そうだよ」

「そうだな。浅倉、ゲームってどういう事するんだ?」

「えっと、み、皆で参加できる奴とかを考えたり

大会みたいに盛り上がる感じの」

「具体的にはなんだよ」

「そ、それは」

「まぁまだ時間はある。浅倉のも参考の一つだ。

もちろん他にも意見があればそれを考慮するしな」


 そんな感じで話は進んでいた。柊介は途中から

黙り込んだ。話しあいが終わり、この日は

解散したが、柊介はずっとクラスに残っていた。

 夕方になっても柊介はまだクラスに居た。すると

教室に誰かが入って来た。


「まだいたんだ」

「?えっと」

「同じクラスの楠洋子(くすのきようこ)よ」

「く、楠さん。ごめん」

「何を謝るの?まぁそれはいいとして。さっきの

あなたのゲーム案。私は良いと思ったよ」

「本当に!?」

「ええ。まぁ私もあまり人前には出ないけど

ゲームは好きな方だからね。ほら」

「あ、ポータブル」

「でも、このクラスは普通すぎるわね。いや

普通より下かな。私からしたら。露骨に嫌いな

奴には嫌な態度取るし、私はああいうのは嫌いね」

「そ、そうだよね。でも、僕も悪いっていうのは

あるよ。こんな性格だし、嫌われて当然だから」

「まぁ確かにちょっとうざいかもね。でも

ゲーム好きに悪い奴はいないわ」

「楠さん」

「まぁ私も前に出るタイプじゃないけど、私は

あなたの味方よ。同じゲーマーだしね」

「ありがとう楠さん」

「じゃぁそろそろ帰りましょ。もう夕方だし」

「うん」


 柊介は洋子と一緒に下校した。洋子は大人しい

性格で、柊介ほどじゃないが、ゲームが好きで

クラスの中でも可愛い方だった。

 それから休み時間や放課後はオリエンテーションの

話し合いがあり、四日目もまだ考えていたが、なんとなく

内容は決まりかけてきた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る