第3章_7 大好きな彼

明くる朝

山は昨夜から降り続いた雪が積もり、朝日にキラキラと照らされた


あれ以来だった彼のお父様に会いにペンションに立ち寄った



「陽斗、来るんなら連絡しろよ

……っで、あの」


「幸世のこと、親父覚えてる?」


「あー、覚えてるよ

こんにちは」


「こんにちは」


「彼女と俺、付き合ってるんだ」


「そうかぁ」


「相変わらず、愛想ないなぁ」


「あの…幸世さん、ちょっと、お聞きしてもいいですか?」


「はい、何でしょうか?」


「幸世さんのお母さん…確か、あの木…好きだったんですよね?」


「はい、とても」


「何だよ、親父いきなり」


「いいのよ。ハル」


「あの…幸世さん、ご兄弟は?」


「親父

いろいろ聞きすぎだよ」


「兄がいます。年が離れた」


「…そう…ですか」


彼のお父様の困惑した表情がその時、心に引っ掛かってた


でも、ハルという存在が私の心のほとんどを占めていて…すぐにそんなことも忘れていた




「ハル、待ってよー」


「ハハハ、はい」



ニッコリ笑って差し出してくれた手に掴まるとその手をグイッと引っ張ってポッケの中で握ってくれる



「大丈夫?滑るよ」


「大丈夫よ、今日はちゃんとスノーブーツ履いてきたよ」


「おっ、えらいじゃん」



少し歩くと秋の風景とは一変した銀世界の中にしっかりと聳え立つあの大木が見えてきた



「ハル、やっぱり、来て良かった」


「うん」




見上げるその木は私達に何かを伝えようとするかのように揺れていた


彼の大きな手をギュっと握りしめた



ハルがいつまでも側ににいてくれますように

そう願って隣の彼に目をやると太陽みたいな笑顔で言うの



「どうした?」


「何でもないよー」


「またぁ、教えてよ」


「んー?ハルのこと、好きだなぁって思ってたの」


「そ、そんなの、俺はいっつでも思ってるよ」


そう言って照れながら背中から抱きしめてくれる彼のこと、やっぱり

……大好き




枝に積もった雪が風にあおられて、私達の上に舞い落ちた

二人を包んでくれるように

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