第1章-7 幸せの意味


初めて男の人の部屋に入った


無造作に置かれた雑誌、

脱ぎ散らかされた洋服



ボーッと玄関で立ってると


「ノン、入ってよ、どうぞ」


ニッコリと笑ってくれる彼に緊張が少しほぐれた



「っで、何?その荷物」


「だって、泊まるんなら、いろいろ、いるでしょ?」


「そうだな(笑)それは?」


「あっ、これ?ユイのところに泊まるってお母さんに言ったら持っていきなさいって…お菓子」


「それはそれは、どうも」


「もう、リュウ、さっきからバカにしてるでしょー」



リュウの肩を叩こうと上げた手を掴まれたかと思うと一気に腕の中に…。


髪を撫でながら耳元で囁くように言った



「ノン……好きだよ」



彼の低い声が耳に…心に響く



優しいキス


何度も角度を変えて繰り返されるキスがどんどん深くなっていく



「っん…リュウ、待って」


「ノン、もう待てないよ」


「ねっ、お願い…待って」



彼は少し離れて私の顔を覗きこんだ


恥ずかしく…目をそらした



「あのね、あの、リュウ、私ね、こういうこと、えっと、だから」



「え?ノン、そうなの?」



「……うん」



「俺はノンの初めてになれたんだ。すっげぇ、嬉しい」


飛び付くように抱きついた彼


「キャッ、…リュウ、嫌じゃない?」



リュウは私の頬に手を添えて俯いてる顔を自分の方へ向け、真っ直ぐに見つめた



「嫌な訳ないだろ。俺はノンの初めての男になれることがほんとに嬉しいんだよ」





どうして、そんな優しい目をするの?

どうして、そんなあったかいの?



触れられてる頬が熱くなっていくのが自分でもわかって、恥ずかしくて、彼の胸に顔を埋めた




「ノン?俺…」


ビクッ


「な、なに?」



「風呂入ってくるな、先入る?」


「うううん、後でいい」






リュウが体を拭きながら出てくる。


目のやり場に困って、そそくさと私もバスルームへ向かった



はぁー、大丈夫かな私




出てくるとさっきより、照明は落とされ、リュウはもうベッドに横になってた


近寄ると彼は起き上がり私の手を握った



大好きな手



「ノン、緊張してる?」



「うん、心臓がもたない」



「大丈夫だよ」




唇がゆっくりと重なる


瞼、頬、首筋に柔らかい唇が這っていく




あれだけ、緊張していたのに、触れられる度にリュウの思いが伝わってきて、

何故だかわからないけど、すごく、安心する




彼の指が私の中心に触れる


「やっ」


「ノン、こんなに……」


「んんっ……」


「いい?」


コクンと頷いた




「いっ…たぁ」


「ノン、目開けて」


「いやっ、恥ずかしい」


「いいから」



瞼を開くといつものリュウのあの笑顔



「大丈夫だよ。優しくするから」



彼の首に手を回した



切り裂くような痛みが徐々に和らぎ、快楽へと変わっていく



涙が目尻から溢れ落ちた





「大好きだよ……ノン」





彼は私の涙を吸いとるようにキスをし、ギューっと強く抱きしめた





リュウ…こんなに幸せな痛みがあること…初めて知ったよ







目が覚めるリュウの腕の中にいた


顔近っ



朝陽が差し込んで、急に恥ずかしくなってきた



そーっとベッドから出ようとした時


「んー」


「あっ、起こしちゃったね、ごめん」


「どこ行くの?」


「え?そろそろ、起きようかなぁーっと思って」


「はい、ダメー」



腕を引っ張られて後ろから抱きしめられ足でしっかりホールドされた



「あれ?ノン、顔真っ赤、かっわいい」


「もう、離してよ~」


「嫌だよ。ずっとこうしてようよ」



耳にかかるリュウの息がくすぐったくて自然に笑い声がこぼれる



「リュウ、好き!」



「へ?何て?」



「好き!!」



「ん?」



「聞こえてるでしょう?もう、言わないからね、絶対言わない~」



「ハハハ、ばれた?何回も聞きたいよ。

だって……

ノン、初めて好きって、言ってくれた」



ドキンと心が波打った




リュウは後ろから頬に触れるだけのキスをして、隙間がないほどに抱きしめてくれた



トクントクンと彼の鼓動が響くと

自然と『好き』という言葉を伝えたくなった



この温もりに包まれていたいと思った





心も体も満たされた朝だった


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